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浪漫@kaido kanata

. 「スプリング・フォンデュを君と」第12回

「桃兵衛です、おじいちゃん」
重厚な扉をノックすると聞きなれた声が答えた。
「入りなさい」
 祖父の林兵衛(りんべえ)は、院長室の奥で大きなマホガニーの机に向かい、書類に目を通していた。
「何だな?」
 銀縁の老眼鏡をずらして、上目づかいに孫を見る。
 来客用のソファに、いつまでも座らないで緊張して立っている孫を、老医師はいぶかしがった。
「実は……退学届けを出してきました」
「む?」
「俺は医者に向いていません。ましてや、ここの跡取りになんてなれません」
「いや、お前なら大丈夫だろう。ただ……医学より他にもっとやりたいことがあるな」
ズバリ、言い当てられて、桃はたじろいだ。
「おじいちゃん」
 老医師は相好を崩した。


児玉清 3

「うちのやつから、みんな聞いて知っている。それと……」
 表情が引き締まった。そして、席を立ってきて桃の前に立った。
「あの暴走族の若者にちゃんと言い渡した。怨みがあるなら孫のお前にではなく、正々堂々とワシに向かってこいと」
「おじいちゃんが!?」
 あのタナカはいったいどういう顔をしたろう。
「解ってくれたぞ、もうお前たちやご老人たちには、手出しはせんと約束してくれた」
「本当かい?」
「ああ、だから、これからお前は、好きな道を誰に臆することなく堂々と進め」
 孫の肩に、逞しい祖父の両手ががっしり置かれた。


                 ☆


 その日の夕方、自宅の部屋でぼんやりしているすみれのケータイが軽い着信音を鳴らした。
 桃からだ。
『また、一緒にフォンデュが食べられそうだぞ。      トウベエ』
「やったあ~~~~!!」
 すみれの叫びに、階下の両親が上を見上げてから、顔を見合わせた。

上戸彩 6



                 ☆

ニッコウキスゲの古径


 9月になった。
 猛暑の中にほんの少し、涼しさが感じられるようになったか?
 ざわめく雑木も、秋の風を受けて銀色に輝いているし、空の青も濃くなったようだ。


                ☆


「何だい、話って」
 すみれが待っているとアジトの前に桃がやってきた。
「実はね、私、決心したの」
「ん?」
「桃兵衛は絵本作家になるって決めて、本当の自分の道を歩み始めたでしょ?」
「うん。さっき、ムカイ助教授にも正式に挨拶してきたとこだ。助教授は、すっかりお見通しだったらしくて、『頑張れよ』って言ってくれた」
「良かったわね!ちょっとこっち来て」


               ☆


 すみれが桃を連れていったのは、ガレージの一角だ。
 目立たない日本車が並ぶ中、レモン色の滑らかな車体の、それもピカピカのスポーツカーが停まっている。ランボルギーニの最新型車だ。

ランボールギーニ 2010年新車 ガヤルド

「見て、これ」
「見てって、すげぇクルマだな、誰の?」
「私のよ」
「えっ!?!?」
「私も自分の目標決めたの。のほほんと選んだ学部じゃなくて、やりたいことをやろうって」
「やりたいこと?」
「プロのレーサーになるのよ!!」
 すみれの瞳は真夏の太陽に戻ったように輝いている。
「………」桃はいっぱく置いてから、オドロキの叫びを洩らした。「プロのレーサーだって!?」
「うん!!私がクルマの運転、好きなのは知ってるでしょ?」
「知ってるも何も……」
 あんな特訓は、二度とゴメンだ。
「ツ、ツバキちゃんは?お前と一心同体のツバキちゃんは、どう言ってるの?」
「ああ、ツバキならカスガ先輩との間にデキちゃったんだって。第二のサエコ女史目指して学生結婚生活、頑張るそうよ」
「………」
 桃はのけぞりそうになった。
「それにしても、こんな高いクルマ、どうやって……」
「桃兵衛のおじいちゃんからもらったの」
「なにィッ!?」
「『この前、うちのマゴがお顔にとんでもないことをしました』って、お詫びにって」
「~~~~~~~~~」
(じいちゃん、そこまでやってくれるとは……!!)
 昆虫の羽根みたいに開くスイッチを、すみれが楽しそうに入れると、新車は華麗に羽根を広げた。
「どうぞ、王子様。夜のドライブへご一緒に」
「は……はは……、お手柔らかにお願いするよ」
 顔を引きつらせながら、桃はおっかなびっくり乗り込んだ。


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. 「スプリング・フォンデュを君と」第13回 (最終回)&「あとがき」

 座席全体を包んで点滅する機器の光が、走ってるうちに濃くなった闇の中のふたりの顔面を華やかに彩った。
 高速のトンネルに入ると、オレンジ色の灯りがよけいそれを増長させた。


輝く車道

「わあ、なんだか、フォンデュを食べた夢の中みたいね」
「こりゃ、スプリング・フォンデュじゃなくて、マシーン・フォンデュだよ」
「エンジンでも食べちゃおか」
「ん」
 ギアをつかむすみれの手を、桃の大きな手がそっと包んだ。
 トンネルを抜けて、パーキングエリアに降り立つと、夜風が心地好い。遠くには、街のネオンが宝石のように散りばめられ、秋の虫が啼いている。

夜景

「1、話題とシュミがじじむさい
 2、顔だけが取り得
 3、実は幼稚なオツム」
「何よ、それ」
「そんな俺でもいいのか?」
 すみれはクスリと笑った。
「そんなこと聞く、デリカシーの無いことも加えてくれる?」
 頬を暖かい手のひらで包まれたと思うと、フォンデュよりも、もっと熱いキスがすみれの心の芯まで蕩けさせた。



  『 スプリング・フォンデュを君と 』

                                       完


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

☆ あ と が き  ☆


おおいに遊ばせていただきました。

同好会メンバーには、イケメンと美女を取り揃え、
老人会メンバーには、ベテラン俳優さんをイメージさせていただきました。
カスガさんも、サエコさんも、ムカイ助教授も、ハイ!!もちろん、そのままの
お名前です!

「顔だけの男」という主人公の設定でした。

     ↑
これを、もっと強調したいなら、いっそホームレスの群れから拾ってきた方が、向いてるでしょう。今回、回りも美形揃いでしたから。いつか挑戦してみましょう。

視点は相手役のすみれになってます。
双方のコンプレックスが色んな事故、事件を経ながら、克服していく過程が書けたでしょうか?
ラブコメは、ハッピーエンドで終わらせるのが、お決まりです。

おつき合い下さいました読者さまに、厚くお礼申し上げます。

           2010年  8月 吉日

                                海道 遠


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

   登場人物  イメージ俳優さん(敬称、略)

山野上すみれ

瀬川桃兵衛(とうべえ)

中庭ツバキ


★【 同好会メンバー 】

ダイちゃん,シンちゃんジュンペイヒロちゃん

メイ、エリ


☆彼らの顧問、ムカイ助教授
☆時々、おちょくりにくる大留年の先輩
☆男子学生の憧れの的、サエコ院生


桃の祖父(林兵衛)
   祖母(百合花)

★絵本作家(桃の師匠)アキラ先生

★暴走族、ヘッド、タナカ
★桃を振った幼稚園教師


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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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