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浪漫@kaido kanata

. 小説「碧き琥珀に眠れ」第11回

 第 三 章  うろこより生まれし者


若い手が、いらいらと手鏡を伏せた。
手の甲には光の加減によって硬いうろこが浮かび上がる。
各大陸から恐れられる軍事大国、竜蛇大陸の皇帝の手である。別名、時輪皇帝とも呼ばれるのは、彼が永遠に繰り返される時の輪を生きる不死の種族であるがゆえだ。
もう何回目の人生になるのか、数えるのも面倒になってしまった。おおかた、老僕に尋ねた方が詳しいに違いない。
しかし、老僕とはいえ彼よりも永く生きている人間はいない。誰の胎から生まれたものか、不死の種族は彼たったひとりなのだ。
何世代もの臣の世代交代を眺めつつ、版図を拡げてゆく――――――。
それが、己が天命であると言い聞かせつつ、。
―――――――――いつまで?
答えはいつもひとつ。永遠に。
ここまで自問自答して、彼はいてもたってもいられなくなる。
唐突に立ち上がり、壁の姿見に向かうと、一気に絹の部屋着を脱ぎすべらせた。
華麗な彫り物に縁どられた鏡は、少年のアンバランスな裸体を映し出した。
濡れ羽色の髪は若々しく波うち、首筋から胸やわき腹、腕の内側など柔らかい部分には鈍い黄金色の皇帝特有の鱗。これは成人すれば消える。瞳孔は爬虫類と同じ三日月型。これも、成人すれば丸くなる。あと数年の辛抱だ。
少年の手は頬に触れ、首筋を伝って胸を下り、腰へ辿りついた。上半身をひねり、背中を映してみる。肩越しにいくら見つめてもなめらかな筋肉の丘陵があるばかりだ。
背骨にそってこんもりと盛り上がる隆起など、影もかたちもない。
何百年も前には首の付け根から腰骨までヒレを持ったこぶが黄金に輝いて連なっていた。
しかし、ひとつの人生を終えるたびにこぶは少なくなっていく。不死といわれる彼にもその命に限りはあるのか。寿命を示すバロメーターが背のこぶだとしたら。こぶだとしたら!
後がない。
裏づけるように、前の人生よりも明らかに成長の遅れが著しい。時の輪が軋みついているのだ。このままでは回転できなくなり、さびついてしまうだろう。
油をささなければなるまい。つまり―――――――碧き琥珀に眠る乙女の生き血をすすらねばなるまい。
そうすればこぶも再生すると信じて――――――。
波の音がヒレのついた耳に届いた。
皇帝リシュダインは全裸のまま、物憂い動作で船窓に歩み寄り、厚いカーテンの隙間から用心深く外を見やった。
紺碧の洋上の果てにぼんやりと岬が見える。突端の城影は、琥珀回廊の前の支配者、メレア公爵の居城である。
「メレアの老いぼれめ」
リシュダインは忌々しげに洩らし、鋭くカーテンを閉めた。まだ成長段階の眼には、初冬とはいえ昼間の光がまぶしすぎる。
「旧領主の権限をかさにきて、アンバーヌを独占するとは・・・・・」
姿見に邪険に覆いをかけた。見たくない理由はもうひとつ。
自らの面差しにあの男の面影を見てしまう。時の輪が軋みついているとはいえ日ごとにあの男に似通ってくる。魂は容貌をも支配するのか。だとしたら恐ろしい。何度人生を繰り返してもあの男の顔になる。それも道理か。
(あの男は余の・・・・)
船室の扉が鳴った。銃僕がひざまずき告げた。
「総督モーガイ閣下より通信が入っております」
「音声だけをつなげ」
 モニターの画面は最低の明度にしても眼にこたえるからだ。少年皇帝はふかふかで重厚な織り模様の絨毯を横切り、壮麗な執務机に着くとモニターの音声ボタンに触れた。
 従僕が手早く皇帝の肩に部屋着を着せかけた。
 「皇帝閣下、モーガイにございます」
 螺鈿をほどこした漆黒の機械からくぐもった音声が届いた。
 「何だ」
 「陛下の生誕記念を祝ってエレクの町はわいております。まことにもって執着至極」
 「笑止よな。侵略者の誕生を心より祝う者がおろうか」
 「陛下のご英明はあまねく天下に知れ渡っておりますれば」
 「この濁世にな・・・・」
 リシュダインは総督のおべっかにうんざりし、金糸の刺繍の椅子に身を預けた。
 「それで用向きは」
 「お喜び下さい。カギが、発見されましてございます」
 「まことか」
 リシュダインの指が思わず映像ボタンにのびた。モニターに銀のグロテスクな形の仮面を着けた男が現れた。眩しさに眼の痛みをこらえながら、リシュダインの三日月型の瞳孔が輝いた。
 「して、どこに」
 「海だとばかり考えて洋上や海岸を重点的に捜索させておりましたところ、思いがけなく自分の方から総督府の門前に出向いてきまして、大道芸を披露しておりました次第で、さっそく身柄を確保いたしました」
 「おお、よくやった。では怪我は無いのだな。お前の部下が手柄にはやり船を沈めたと聞いたときはてっきり駄目だと思うていたが」
 「申し訳もございません。出すぎをいたしました部下は即刻処分いたしましたゆえ」
 「まことのカギなのか。間違いはないか」
 「正真正銘、ジャレツめの温存していたカギにございます」
 リシュダインの眉根が鋭く翳った。
 総督モーガイは自分の失言に気づいた。
 「ご安心ください、間違いなく蘭の名を持つ者にございます。ただ――――――」
 「ただ?」
 「船の事故の後遺症か、記憶を無くしております」
 「記憶などなくてもかまわぬ。あとは碧き琥珀さえ我が手に入れば、余は乙女の生き血をすすることができる」
 「御意」
 「モーガイよ。早急にメレア公爵めを屈服させよ。琥珀を手に入れるのだ。余は、もう待てぬ」
 「諾」
 モニターの中でモーガイが典雅に礼をした。
 リシュダインはスイッチを切った。
 碧き琥珀に眠る乙女と、彼女を取り出すカギ。
 このふたつがそろえば、彼はまた永遠の時間を生きてゆける。軋みついている時の輪は、すべりよく廻りだすにちがいない。
 ほっとしながらも心の奥に一抹の黒雲がよぎる。時の輪が順調に廻り出せば、鏡を覗くたび否応なくあの男と対面することになる。
 (十年前、あの男が命令を遂行していればこうまで焦らずともすんだものを)
 少年皇帝はもう一度手鏡を取り上げ、薄暗い船室で今度は飽きることなく見入り続けた。



. 小説「碧き琥珀に眠れ」第12回

「何だって?総督に連れていかれたあ?」
一座の団員は声をそろえてパルドッサムに詰め寄った。
パルドッサムはその巨躯を情けなさそうに小さくして、うなだれていた。
「本気じゃなかったんだ、剣だって投げナイフだってマジック用の偽物だし・・・・」
「でも、聞くところによると彼を火炙りにしたそうじゃないのッ」
マドカが物凄い剣幕でパルドの襟首をつかむ。
「お、俺、ついカッとしちまうだろ、だから・・・・でも、殺すつもりなんかなかったんだ。本当さ」
「何だってこんな勝手な興行をしたのか、あんたらしくないね、パルド」
リダに叱られて、パルドはこれ以上縮みようがないほど小さくなった。
「罰として、十日間動物の世話すべて!今後また私の許可なくこんなことをしたら、一座を脱退してもらう。いいね」
「わかったよ、リダ」
告白できない男心がつらい。パルドはできることなら薔薇豹の胎袋に入ってしまいたい気分だった。
リダが皆に向き直り、力強く言った。パルドの処罰はこれでよしとして、問題はムダ飯喰いの方だ」
「何か咎められたにしちゃ、ひとりだけ連行されるとは妙だなあ」
タルタルーガが道化のメイクのまま、あごに手をあてた。カンナがそれに応え、
「決ってるじゃないさ、総督はキャスの美しさに魅せられたんだよ」
「あの銀仮面、相当なスケベだったってわけだね!」
マドカは鼻息荒く叫んだ。
「どうしよう、キャスはあんなに綺麗なんだもん、総督野郎に骨まで骨まで弄ばれてギタギタにされちまう!」
「まったくあんたの恋人ときたらなんて厄介な火種なんだい」
リダが肩をすくめた時、急に泣き声が爆発した。
「わあああん、ごめんよお!パルドにあいつをこらしめてってお願いしたの、おいらなんだ!」
ロピだった。
一同、彼を取り囲んだ。
「この子ったら、なんてことを!」
マドカがさっそく息子の身体を裏返し、お尻をひんむいて平手打ちを始めた。
「だって、だって、母ちゃんこの頃あいつにばっかりかまけてて、おいらのことちっともみてくれないんだもん!わああああん」
ロピは足をばたばたさせた。
「お黙り、いくらなんでもやっていいことと悪いことの区別くらいつくだろ!」
「わあああん!」
半狂乱に陥っているマドカは息子の尻を容赦なくたたく。リダがたまらずひきとめた。
「マドカ、おやめよ。ロピも反省してるじゃないか」
「でも、でも・・・・」
リダはマドカからロピを抱き取り、真っ赤になったお尻に息を吹きつけた。
「ほら、ロピ。もう泣くのはおよし。キャスは私が助け出してやるから」
一同の驚愕の眼が女団長に注がれた。
「ほ、本気かい?」
うなずくリダの眼には闘志が燃えている。
「リダ、俺が行く!」
パルドが慌てて叫んだが、
「あんたは目立ちすぎるから残ってて。マドカも駄目、冷静じゃないから。タルタルーガ、お願い、手伝って。私に考えがあるんだ」
「合点だ」
小太りの道化師は、メイクしたウインナソーセージの唇でさも面白そうににんまりとした。
マドカがすがりついてきた。
「リダ、お願い。お願いだよ。キャスを、キャスをどうか無事に・・・・」
返事の代わりに、リダの紫の瞳がウインクで応えた。



. 小説「碧き琥珀に眠れ」第13回

総督府の奥深く。
銀仮面の総督が起居する部屋だろうか、竜蛇特有の調度―――――――螺鈿のふんだんに施された、芸術度の高さを証明するものたちがところ狭しとならべられている。
苦く、頭の奥で嫌悪しながらもやがてとりことなっていきそうな香が室内に立ち込めていた。
部屋の中央、優雅な織物の長椅子に、キャスケードは長いこと腰掛けていた。
なぜ、急にこんなところへ連れてこられたのか判らないし、考えるのも億劫だった。海岸で助けられて以来、どうも深く考えることが苦手だ。
・ ・・・もともとそうなのかもしれないが。
暇つぶしに、長いキツネ色の巻き毛を指でカールしてははじけさせ、遊んでいる。
やがて、両開きの扉が開かれ、黒い長衣の民族衣装を着けた背の高い男が入ってきた。
顔面にはグロテスクな仮面―――――爬虫類とも魚類とも歳経た樹木のこぶとも見える目びさしや面頬の着いた銀の仮面をつけている。グロテスクでありながら、それははっきりと笑いかけていた。
「長らく待たせたな、キャスケード」
名を呼ばれたことを疑問に思ったのかキャスケードはぼんやりと相手を見返した。
「名前か?さっき、少し眠ってもらって深層心理を拝見したのだ」
「俺、帰らなきゃ・・・・」
ゆらりと長いすから立ち上がった。
「帰るとはどこへ?」
「ええと、マドカのところ・・・今夜は、コウモリのシチューだって言ってた」
総督は大仰に両手を上げた。
「君ときたら、本当にすっかり記憶をなくしているんだな。大切な人間の名前は忘れて、コウモリのシチューだなどと」
「大切な人間?」
「そうだ。君にとって命より大切な」
「あんた、知ってるのかい」
「逢ったことはないが、顔はよおく知っている」
「どんな顔だろう?見てみたら、俺、何か思い出すかもしれねえ」
「見てみたいか」
「ああ!」
銀の仮面の口元が笑ったように見えた。
総督は歩み寄ると、若者をもう一度長椅子に座らせ、自分も腰掛けた。
そしておもむろに仮面の止め具をひとつづつはずしてゆき――――――取り去った。
横わけにされた艶やかな黒髪がはらりとあごにすべり落ち、顔面を縁どった。
それを見たとたん、轟音をともなってすべての記憶がキャスケードの胸に蘇った。
眼の奥に兆しさえなかった光が灯り、翳っていた太陽が雲間から顔を出した。
無償の輝きに満ちた笑みだ。
「ジャレツ!」
主人を見つけた子犬が大喜びするようだ。キャスケードは相手の両肩に飛びついた。
「ジャレツ、逢いたかった!どうしたんだよ、こんな恰好して。まさか、竜蛇軍に再就職したわけじゃねえよな?あ、俺の乗った船が沈没したって聞いて、竜蛇と一緒に探してくれたってわけかい?いやあ、心配かけて悪かった。夜中、急に飛翔アザラシ号が炎上しちゃってさ、救命ボートで逃げたはいいんだけどひでえ時化でさ・・・・。でも、俺、運良くサーカス一座に命救われちゃってさ。これも日頃の行いがいいからかな。へっへ!綱渡りやお手玉なんか習っちゃったんだぜ。ほら、見ろよ、この気恥ずかしいぴらぴらの衣装!俺ってけっこう器用だろう?トンボはきれるし一輪車だって乗れるしスジがいいって褒められちまってさ。褒められるだけじゃねえ、ここでもまたまた女に惚れられちゃってよ、このサーカス一座の子持ちの女が俺にぞっこんでやんの。これがまたイイ女なんだな。団長もグラマーな女でさ、俺ン中のオトコが疼くわけよ。まったく色男はつれえよな・・・・・。それにしてもあんた、髪が伸びたな。あ、俺がひとり旅に出てから二年も経つんだから伸びて当たり前か。でも、ひょっとして今のオンナが長めが好きだったりして。くうう、憎いねえ、俺に負けず浮き名の絶えねえやつ!
突然――――――、
調子よく回し続けていた舌が止まった。紅潮していた頬が急激に蒼ざめ、後じさった。
「お前、お前誰だ!」
「今、ジャレツと呼んだばかりじゃないか」
男はジャレツと同じ、なめし皮を思わせる声で言った。
「ジャレツじゃねえ、ジャレツの顔だが目つきが違う!あいつはこんな蛇のような目をしてねえ!」
「これはご挨拶だ」
「そうとも、ジャレツがもう一度、門をくぐるわけがねえ!俺はどうかしてた!」
キャスケードは頭を抱えた。そして険しい目で相手に向き直った。
「お前は誰だ!ジャレツと同じ顔、ジャレツと同じ声、同じ身体つき、いったい・・・」
「―――――――私か?」
男は唇の端だけで笑い、若者を見下ろした。
「私は琥珀回廊に派遣された総督モーガイ」
「何故、ジャレツと同じ顔なんだ!」
「やつとは、言わば兄弟だからだ」
「兄弟?」
「兄弟とはいっても、一般の血縁のそれではないがな」
モーガイは言い、改めてキャスケードに椅子をすすめた。そして茫然と立ちつくす相手を尻目に、従僕に酒を持ってこさせた。
「どうかな、極上の竜の吐息は」
「答えろ。なぜ、ジャレツと同じ顔なんだ」
モーガイは若者のために満たしたグラスを盆に戻した。
キャスケードの膝ががくがくと震えた。見れば見るほどジャレツと寸分違わない。双子よりも似ているだろう。似ているというより、本人そのものだ。ひょっとしてジャレツがひと芝居でもうっているか、竜蛇に洗脳されて古巣に帰ったかという考えがよぎる。
 彼特有の黒曜石のしっとりとした視線が射抜いてくる。

. 小説「碧き琥珀に眠れ」第14回

「なるほど、さも美味そうだな、君は」
「君・・・」
君、だなどとはジャレツは言わない。
「やつが溺れてしまったのもわかる」
「何のことだ?」
「そうだな、順序立てて話してやろう。私とジャレツがなぜ同じ顔なのか。それは私たちがクローンだからだ」
「クローン?」
なんだっけ、ええと。そうだ、複製人間のことだ。複製?ジャレツが?誰の?
「私たちは竜蛇の科学の粋から生まれた、皇帝リシュダインのうろこの一片から生まれたクローンなのだ」
「―――――――――!」
あまりの衝撃に言葉がなかった。
「驚いたかね。驚きついでにさらに言うなら、クローンは過去数百年に渡り何百体も生産済みだ。竜蛇ではわれわれは珍しい存在でも何でもない。もっとも、皇帝を裏切り、祖国を出奔した不届き極まるクローンは後にも先にもジャレツひとりだが」
「ば・・・・」
あごから冷や汗をしたたらせながら、キャスケードの瞳が青い鬼火となって燃えた。
「ばかほざくな!ジャレツはガキの頃、親父に奴隷市で売り飛ばされて逃げ出し、首都のリシュダインのスラムで生きてきたって話してくれたぞ!」
「クローンは一般社会に放たれる前に様々なオリジナリティを持った生い立ちのシナリオ、つまり偽の両親、環境を提供される」
「じゃあ、ジャレツは自分がクローンだって知らねえってのか?」
「おそらく」
モーガイはすました顔でグラスに口をつけた。
「嘘だ!俺は信じねえぞ、そんなチンケな作り話なんか!
「掛けたまえ、キャスケードくん。そう肩で息をしながら突っ立っておられては落ち着いて話もできんじゃないか」
「これが落ち着いていられるかっ」
モーガイはグラスを戻し、改めて獲物の顔をまじまじと見つめた。
「怒った顔が美しいのは美女だけではないのだな。今ほど男色家でないことを残念に思ったことはない。まさに蘭の化身だ」
「寝言ぬかしてると仮面脱いでる間にドタマ叩き割ってやるぞ、おっさん!」
「口さえつぐんでいればな」
モーガイは嘆いてから、足を組み変えた。
「白鳳、スノーバードの都でジャレツが拾った孤児。ストリートチルドレンのボス的存在で、敵対グループからリンチされようとしているところを救われた。それが七年前」
「てめ、どうしてそれを?」
「人はお前たちをただの相棒以上の絆で結ばれているという。孤児同士、国籍は違えどその信頼は真円真珠より円く、竜の吐息より熱いという。下品なやからは恋人同士だと噂し、いや、一人の女を共有している間柄なのだと取りざたし、否、彼らはすがすがしいまでの師弟愛で結ばれているという」
「どうして・・・・」
「私にはどれが真実かは判らぬし、どうでもよいことだ。問題は、君とジャレツの出逢いだ」
「・・・・・・」
キャスケードは警戒して黙った。竜蛇の目をくらまして白鳳で生きてきたはずが、ジャレツと自分の行動は一から十まで彼らに筒抜けだ。
この男は何が言いたいのだろう。総督府にまで連れ込んで、何を告げたいのだろう。
「君は子どもの頃、偶然、危機を彼に救われたと思っているのかね」
「・・・・・・」
「変だと思ったことはないのかね」
「変?」
「いくら器量がいいとはいえ、イタチの群れほどスラムを徘徊しているストリートチルドレンの中から、どうして君だけに目をつけたのか。そしてなぜ縁もゆかりも義務も得することもない君を拾って面倒をみたのか」
「そ、そんなこた知るわけねえだろ」
実際、考えたこともなかった。
無償のジャレツの好意に甘んじ、過ごしてきたキャスケードなのだ。自分もまた損得勘定でジャレツのために動いたことは一度もない。理由はただひとつ――――――彼が好きだからだ。
揺るぎのなかったキャスケードの胸に、モーガイの言葉は波風をたてた。
「実は、偶然ではないのだ」
「なに?」
「君とジャレツは逢うべくして逢ったのだ。我が時輪皇帝、リシュダイン様の命により」
一瞬――――――、空白がキャスケードの脳裏を塗りつぶした。何を告げられタノか、理解するまで数秒を要した。
「な・・・・!」
心臓がばくばくと溶岩の泡のように弾けた。
モーガイは威圧的に立ち上がった。
「無垢なんだな、君は。かわいそうに、私が全てを明かしてやろう」
「で、でもジャレツが竜蛇に愛想をつかして国を出たことくらい、ちゃんと知ってるぞ。なのに、なんで皇帝の命令をきくんだ?いい加減なことぬかすと、マジでドタマへし割るぞ!」
キツネが虎の前でしめすカラ元気だ。
モーガイは一向にかまいもせず、
「ジャレツは皇帝陛下のクローンだと言ったはず」
「・・・・!」
「たとえ国を捨てても我が身の細胞にまで逆らうことはできないのだ。いいか?陛下のジャレツへのご寵愛は尋常ではなかった。自己愛と呼ぶべきか――――――、陛下はご自分のクローンの中でも彼をもっとも愛しておられた。一介の工作員でありながら、面前に上がることを許され、相談役にまで任じられていた。国策はもちろん、プライベートなことまで」
モーガイの言葉の端々に嫉妬がちらついた。
「その時代に、陛下は彼にご命令されたことがある。―――――――蘭の名を持つ少年を手に入れよと」
「俺のことか?」
「そうだとも、キャスケード。君こそ、自分がどんな能力を秘めているのか知りもしないで気ままな暮らしをしてきたのだ」
「ああ?」
学もない、血筋も判らない、ちょっとばかりひと目をひく美貌だけが取り柄のこんな男に何の能力があるのだ?
「俺の得意なことって、女を落とすことと、後はさっきも見ただろ、身軽なこと。この身長でトンボきれるんだぜ。そのくれえかな。色男ってのは芸もねえもんだな。変なのはあんたらじゃねえのか。なんでまた俺が皇帝とやらから欲しがられるんだよ」
「それはおいおい明らかとなろう。とにかく、陛下はお前を所望しておられる。ジャレツは以前から陛下の意向を知っていたから、お前をスノウバードのスラムから探し出し、いつの日かお前を手土産に竜蛇に帰るつもりなのだ」
「嘘だ!」
「お前への手厚い真心はすべて下心あってのことなのだ」
「嘘だ!俺はみんな信じねえ、あいつがクローンだってことも!」
「これでも―――――か?」
モーガイはゆっくりと壁際に歩み寄り、カーテンの端からぶらさがっていた房紐を引いた。奥の壁一面を覆っていた布が左右に割れ、おおきな肖像画が現れた。
「第二十二代――――――つまり先の人生で三十歳当時の皇帝陛下の肖像だ」
モーガイは忠誠を捧げた相手をうっとりと眺めた。
きらびやかな皇帝の盛装に身をかためたその男は、まさしくジャレツの顔だった!
最低最悪の悪夢が渦を巻いてキャスケードに押し寄せた。
「嘘だ、嘘だ、嘘だあああああ!」
キャスケードは頭をかきむしって暴走し、ゴブラン織りのカーテンを引きちぎった。
「俺とジャレツを引き裂こうったってそうはいかねえぞ!」
テーブルを蹴飛ばし、グラスを砕く。瓶のかけらで皇帝の肖像画を切り刻む。
モーガイは一歩退いたのみで、冷静に見守っていた。
充分な効果を与えた確信があった。
―――――――これで、ジャレツとこの若者の信頼関係にひびが入った。
憎きジャレツよ。皇帝陛下のご寵愛を独占し、出奔してなお、あふれてあまりある憎悪を陛下よりうけたまわっている憎きジャレツよ、命を奪うなどいつでもできる。「死」という安息などやすやすと与えてなるものか。肉体的苦痛よりもはるかに辛いことを味あわせてやる。最愛の若者から憎まれ、絶望するがよい。
モーガイの面に、残忍な笑みがにじんだ。
扉がノックされた。
入ってきた従僕は、室内の惨状に、とりわけ切り裂かれた肖像画を目の当たりにして顔色をなくした。
「皇帝陛下ご生誕記念祝賀にご奉納申しあげるため、改まって総督閣下へお披露目したいと芸人がふたり参っておりますが・・・・」
「多忙と申せ」
「しかし、皇帝陛下ご生誕記念祝賀への奉納でございますので、むげに追い返すことはいかがか――――と」
「うむむ」
割譲地で問題は起こしてはならぬと厳命を受けているモーガイは、皇帝の名をもちだされると、どんなくだらぬ奉納も、断るわけにはいかなかった。
キャスケードは尚も荒れ狂い、室内の装飾を手当たり次第ガラクタの山と変えていた。
「おとなしくさせましょうか」
従僕の提案をモーガイは退けた。
「かまわん。自分を傷つけぬようにだけ、監視しろ。野生の蘭ならぬ野生の獣だな、まったく」
「待てっ」
モーガイを部屋から出させまいとしてキャスケードは追いすがった。が、呆気なく従僕にみぞおちを直撃され、床に転がる。
「待てえ、くそおおおおお!」
非情な施錠の音が扉の外から響いた。
切り裂かれた肖像画――――――ジャレツの漆黒の瞳が、絨毯の上をのたうつ若者を冷ややかに見下ろしていた。


. 小説「碧き琥珀に眠れ」第15回

 第 四 章   針葉樹の森で・・・


すらりと背の高い青年道化師に、淑女の熱い視線が集まった。
総督府の大広間では、エレクの町の名士諸氏が残らず招待され、皇帝生誕記念祝賀のレセプションがたけなわだった。式典からすでに七日め、連日連夜の栄華の集いである。
この夜、飛び入りで祝賀奉納を願い出た道化師のパフォーマンスが一番注目されていた。青年と、樽体型の中年男の凸凹道化師のコンビがそれである。
彼らは人ひとり楽に入れそうな玉を一個と、犬、サル、インコ、そして世にも珍しい漆黒の獅子を連れていた。
たてがみから尻尾の先までみごとにカラスより黒い獅子に、まず人々の目は吸い寄せられた。
それから、道化師たち。中年男はかつらだか地だか、禿げ頭の周りに派手な黄色の巻き毛をちぢらせ、アプリコットみたいな鼻を着け動物たちとひょうきんな芸を繰り広げる。細面の青年は物悲しげでシンプルなメイクを顔面に施し、モノクロのスリムな衣装の胸元にはあふれんばかりのフリル。銀青色の短い頭髪が針のようにつったてられてりりしい。
黒獅子との鮮やかなアクロバットを披露し、来客――――――特に婦人方を魅了していた。
総督はいつもの銀仮面を寸分の歪みなく着け、表情を秘めたまま正面席で見物している。その前を、途切れなく続く客たちがグラスをかざしつつ通りすぎてゆく。
鷹揚にうなずき返しながら、総督は仮面の下で苛立っていた。
やっとのことで蘭の名を持つ若者を手に入れることができたのだ。皇帝と、ジャレツの両方を手玉にとれることができたのだ。こんなくだらぬ余興に時間を費やしているひまはない。
膝頭が知らず知らず神経質に揺れた。
ショーはクライマックスを迎えていた。
黒獅子の背に片手倒立した青年道化師のつま先へ小ザルが昇り、天井からぶらさげられた薬玉を割ろうという趣向だ。
しかも、黒獅子は玉乗りしつつ、である。
一同、客ばかりでなく護衛の兵までもがこの瞬間を手に汗握って注目した。
かぶりつきで見物していた中年の婦人がネコを抱いていた。
待機中の小ザルが何の気まぐれか、つと近づき、ネコの尻尾をひっぱったのはその緊迫の最中だ。ネコは仰天して毛を逆立て逃げ出した。
「あら、ハンネローレちゃん!」
小ザルがそれを追う。イヌらがけたたましく吠えながらそれに続く。
インコがいっせいに羽ばたいて給仕の手元を乱す。緊張を砕かれた黒獅子が玉から飛び降り、その拍子に青年道化師の身体が一回転しながら――――――――小道具の山に
――――――激突――――――した!
パン!パンパパン!
爆竹が積まれていたらしくいっせいに弾けた。たちまち硝煙の臭いが大広間に立ち込める。
人々は耳を押さえて悲鳴をあげた。
人間より驚いた動物たち――――――とりわけ黒獅子は耳をつんざく咆哮を上げるや、部屋中を暴走し始めた。
逃げ惑う客たち、事態を収拾しようと右往左往する兵ども、喉を嗄らして命令をとばす上官――――――しかし、誰もかれも硝煙に咳き込み、涙が止まらず、ままならない。
総督モーガイでさえ、仮面の下に進入してきた煙に目と鼻と喉を刺激され、苦しくてたまらなくなった。がまんできず、仮面を外して見たものの硝煙は室内に充満しており、苦しさは少しも軽くならない。
「閣下、どうぞ外へ!」
近習がすすめたが、この混乱を放り出してこの府の主人だけが退出できるはずもない。
モーガイは苛立ちの極に立った。
「さっさとその獣どもをつまみ出せ!」
煙にむせながら怒鳴ったとたん、照明が消えた。
パニックの頭上に闇がふりそそぎ、いっそうのパニックを呼んだ。

* ***********************************

<・・・・して>
「え?」
<私を海へ戻して・・・・>
床に身を投げ出し、逞しい胸郭を波打たせていた若者の耳に絹糸より細い声が届いた。
「誰だッ」
まだ興奮のさなかにあるキャスケードの神経は鋭く刺激された。
跳ね起きて耳をすましてみたが、室内は夜のしじまが支配するばかりだ。
突然、本館の方からの騒々しい物音が静寂を破った。大勢の人間の悲鳴と足音。
直後に、闇が降ってきた。
「な、何だ?どうしたんだ」
――――――――と、天井からコツコツと音がした。通気口のはめ板が外され、蜘蛛のようなずんぐりとした人影が下りてきた。
「俺だよ、キャス。助けにきたぜ」
「タルタルの師匠?」
暗闇の中で、禿げ頭のピエロは親指をたてた。
「じゃ、この停電は師匠が?」
「そうだ。非常発電装置が作動するまで五分しかない。いいか、よく聞け、キャス。これから迎えがここへやってくる。そしたらお前は迎えに乗って大広間へ行け」
「ええっ?だって大広間にゃいっぱい人間がいるんだろ?総督だって」
「大丈夫、催涙ガス入りの爆竹をぶちまけた上に真っ暗闇じゃ、何がどうなったのか誰も気がつかん。おまけに割譲地の名士をむげには扱えんもんだから、竜蛇兵士もおたおたしてやがら。ほうら、お迎えのご到着だ」
タルタルーガが扉に飛びついて中から鍵を開けると同時に、大きな毛深い獣が入ってきた。廊下の常備灯に仄かに浮かび上がった真っ黒い獅子を見て、キャスケードは腰を抜かした。
「わあああ、な、な、何だ、お前!」
真っ黒い獅子に扮装した薔薇豹は、覚えのある若者の頬をぺろりと舐めあげた。

* *****************************

照明が復活した。
大広間のパニックは何とかおさめられ、窓は開け放たれた。
来客たちは着飾ってきた衣装と美々しく飾られた大広間の惨憺たる有様に、憤る気持ちさえ失せていた。
中でも、メインディッシュを運んできた給仕と鉢合わせでもしたのか、総督の惨状たるや同情を買わずにはいられなかった。
威儀を正した軍服はもちろん、勲章の群れもぎんやんまソースの洗礼を受けていたし、肩章の上にはイヌワシステーキがでん、と乗っかっていた。
思いがけなく総督の素顔を拝見できた来客たちは、彼がまだ若い豊かな黒髪の青年で、噂の傷跡など何もないことを、後日の噂のタネとしてどさくさまぎれにしっかりと入手したのだった。
ふたりの道化師はやっとのことで動物たちをおとなしくさせた。
「も、申し訳ございません、総督閣下様!」
禿げ頭がひざまづき、両手を合わせて詫びた。
「大切なお席をお騒がせいたしました罰は、いかようにもお受けいたしまする」
青年道化師も黒獅子の頭を床におさえつけ、神妙にこうべを垂れた。
この場で首をはねたい心境だったが、モーガイはかろうじてそれをのみこんだ。
これ以上ことを大きくしてくだらぬことに時間を浪費するのは愚かだ。皇帝生誕記念のレセプションで血が流されたとあっては皇帝もうるさかろう。
あの黒い獣が怪我人を出さなかったのは不幸中の幸いでもあることだし。
「咎めは無し。一刻も早くここから立ち去れ」
モーガイは忌々しげに言い渡した。
ふたりの道化師は総督の度量の広さに感じ入って、涙を流しながら大広間を後にしたのだった。
イヌと、小ザルと、インコと、黒い獅子をひきつれ、大きな玉を転がしながら―――――。


. 小説「碧き琥珀に眠れ」第16回


台無しになった軍服を近習に押し付けるや、私室に戻ったモーガイを、さらなる事態が待ち受けていた。
大事な若者が消えうせていたのだ。
周到に眠らされていた監視兵を叱り飛ばし、すぐさま総督府全館を調べさせたものの、手がかりは得られなかった。
残されたのは切り裂かれた皇帝の肖像画だけだった。
「しくじったな、モーガイ」
まだおさまらぬ涙と鼻を拭いていたモーガイはぎくりとして振り返った。
振り返る前に、強烈なりゅうぜん香が相手を教えてくれた。
竜蛇の工作員のひとり、カイドーである。
かつてジャレツと対で竜蛇の双の牙と恐れられたが、片牙となって久しい。
すでに青年とは呼べぬ大人だ。黒髪は脂で後ろへ撫でつけられ、真円の黒い眼鏡にあごひげ、頬骨高く頑健な面構えは十数年変わらない。
洒落者と定評のある彼は、いつも金糸の刺繍の豪華な竜蛇の民族衣装をまとっていた。
真円の黒眼鏡の奥の瞳は、旧友であるモーガイも見たことがない。
何を考えているか判らない不気味な男だが、皇帝陛下への並外れた忠誠は軍人すべての知るところである。
「来ていたのか」
「レセプションにまぎれてな。せっかく蘭の名を持つ若者を手中にしながら、この不始末を何と陛下に申し開きするつもりだ?」
カイドーはぼろぼろになったゴブラン織りの長椅子に腰掛け、煙草をくわえた。
「だから、早々と陛下に報告などするものではないのだ」
「陛下をじらせるのも一興」モーガイはたじろぎながら、虚勢をはった。「どの道泳がせてジャレツめをおびき寄せる算段だったのだ。私はあんな小僧に用は無いのだからな。要は、ジャレツさえ苦しめることができれば、陛下が琥珀の乙女とカギの若者を待ち焦がれて石になってしまおうと知ったことではない」
「気の毒に。琥珀回廊の総督に任命したお前の働きを強くあてにしておられるだろうに。――――――そんなに陛下のご成育に支障がでているのか」
カイドーは旧友を真っ向から見やった。
「知らんのか」
「おかげさまで忙殺されている。陛下とは両三年お目にかかっていない」
「今はすっかりご成育が止まってしまわれた。本来ならもうすっかり鱗も消え、瞳孔も円くなってご成人あそばされる頃なのに、見かけは相変わらず十四、五のままだ。
「ふうむ」
カイドーは重々しく紫煙を吐いた。
「やはり琥珀の乙女とやらが必要か」
「効き目があるのだろうか。そもそも琥珀の乙女と陛下はどういう関係なのだ、カイドー?」
「極秘中の極秘、禁忌中の禁忌を俺に喋らせようというのか、モーガイ」
「い、いや」
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真円の黒眼鏡に見入られて急いで打ち消すモーガイに、カイドーは酷薄な笑みを返した。
「陛下はさぞワラをもつかむ思いでおられることだろう。お前が理由を知ろうが知るまいが任務は遂行しなければならない――――――――ところで琥珀の乙女の在り処は」
「メレア公爵という老人が城の奥深く隠している。これがまた難物の上、琥珀回廊の民の信望がいまだに厚いときている」
「手をこまねいているわけだな」
「手段を選ばなければいつでも手に入る。それまでヒマな老人に守をさせておくさ」
モーガイは竜の吐息のボトルを用意した。ふたつのグラスに紅に近いセピア色の液体をそそぐ。
「では、再会を祝して」
「待て。お前、仮面をどうした」
カイドーに言われて、モーガイは初めて仮面を脱いだままの自分に気がついた。
「さっさと着けろ。ジャレツと乾杯するようで不愉快だ」
「お前のジャレツ嫌いは根強いからな」
「互いにな」
「仮面を着けては乾杯ができん。待て」
酒を飲み干してから、モーガイは従僕に命じて仮面を持ってこさせた。
「それを着けるようになって何年だ」
「早や、十年か。ジャレツが出奔した年からだからな」
仮面を被りながらモーガイは応えた。
「数百人のクローン全員にそれを着けさせるとは、陛下も徹底しておられる」
「裏切り者の顔は見たくないとの仰せだからな。琥珀の乙女を手に入れて、ご自分が順調にご成育なされたあかつきには、いったいどうなさるおつもりだろう」
「竜蛇宮じゅうの鏡を割ってしまわれるのではないかな」
カイドーの言葉が冗談なのかそうでないのか、モーガイは判断がつきかねて、気まずく黙りこんだ。



. 小説「碧き琥珀に眠れ」第17回

「うっぷ、気持ちわりい、酔っちまったぜ」
玉の中に押し込められていたキャスケードは、やっと玉をこじ開けて出してもらい、思い切りのびをした。
「キャス!」
マドカが首ったまにしがみつき、一座の皆が歓声を上げた。
「あれあれ皆さん、おそろいで」
「おそろいで、じゃないでしょ、キャス。どんなに心配したか!」
総督府からの追っ手がないか、用心に用心を重ねての脱出行だった。
リダとタルタルーガは遠回りを繰り返して、やっとこの落ち合い場所の森にたどりついた。
マドカとロピ、パルドッサムとカンナが気配をひそめて待っていた場所は、針葉樹の鬱蒼と繁るエレクの町の郊外である。
荷物をまとめて馬車を止め、もちろん派手な彩色は干草で隠し、農家の馬車を装って彼ら自身も野良着に身をやつしていた。
明かりは掛け布をかけたランプのみ、真夜中の森には夜行動物の気配しかない。
不気味な場所だったが、サーカス一座の面々は、無事にキャスケードを救い出せたことでとりあえずほっとした表情だった。
マドカは嬉しくて、立て続けに彼の頬にキスをした。
「よかった、キャス。無事で」
「マドカ!」
答えるなり、キャスケードはマドカにくちづけを返し、その身体を抱き上げた。
一座の面々は呆気にとられた。
パルドと一緒に謝ろうと、もじもじしていたロピはいちばん驚いた。
マドカはゼンマイ仕掛けのお人形だった恋人の様子が、まったく違うことに気づいた。
「あんた、ひょっとして記憶が・・・・?」
「昔のことなんか、どうでもいい。俺にはマドカ、お前だけだ」
そのままマドカの馬車へ直行する。タルタルーガが口笛を鳴らした。
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「母ちゃん!」
後を追おうとしたロピは、暖かい手にひっぱられた。青年道化師のメイクのままのリダだった。
「おいで。今夜は私の馬車でおやすみ」
「やだい。母ちゃん、母ちゃあん」
「おいで」
暖かいが有無を言わせぬひっぱり方だ。リダは泣き叫ぶロピを抱いて、自分の馬車へ連れて行った。
その寂しげな横顔を、パルドッサムが凝視していた。リダのキャスケードに対する想いの深さを目の当たりにさせられたのだ。
「あんの野郎おおおお、懲りないやつめ!」
かたわらに伸びていた人の腕ほどもある枝がバキリと折られた。

* ***********************

マドカは若者の足の指をピアノの鍵盤のようにして弾いてみた。
「仮面の総督のやつ、この神話彫刻みたいなあんたの足指を一本ずつ吸ったりしてないだろうね」
それまで身じろぎもせずに、森に夜明けの気配が満ちてゆくのを感じていたキャスケードは、目の前ににょっきり突き出たマドカの白い足首をつかんで勢いよくひっぱった。
「そんなことさせるかよ、ターコ。ツラにションベンかけてコテンパンにしてきてやったい」
「ふふ、記憶の戻ったあんたってほんと、ワルだね。昨日まで迷子の子猫だったのに」
毛布の中で方向転換したマドカがキャスケードの胸の上に顔を出した。
「あんたって、なんて喰えないの」
「お前もさ、マドカ」
「あんたって、なんてマズイの」
「お前もさ、マドカ」
「あんたって、なんてニガイの」
「お前もさ、マドカ」
「あんたって、なんてカライの」
「お前もさ、マドカ」
「あんたって、なんて――――――」
「なんて?」
「なんて甘いの、私のキャスケード」
「お前もさ、マドカ」
ふたりは氷河も溶けそうなキスをかわした。
その最中にキャスケードがいきなり手を伸ばして馬車の幌を取り去ってしまったので、あられもない姿のふたりは早起きの小鳥の目にさらされてしまった。
「バカ、何すんのさ」
「いいじゃねえか。今だけ、森は俺たちのもんだ」
朝の真新しい光の中で、ふたりはいつまでも小犬のように戯れた。




. 小説「碧き琥珀に眠れ」第18回

木漏れ日の中、谷川で顔を洗うリダの姿があった。カンナが後からやってきて長い髪をくしけずり始めた。
「眠ったかい、あの子」
「どうにかね」
「あんたは」
リダは答えなかった。
タオルで顔を拭きながら川岸の岩に腰を下ろす。シャープな頬に水かげろうが映って輝いている。森の女神が自分のものにしてしまいたいと思っても、不思議はない峻烈な美しさだ。
カンナは惚れ惚れと眺めた。
「カンナ、頼まれて欲しいんだけど」
「なんだい、改まって」
女団長は革ジャケットのはちきれんばかりの胸元から古びた巾着を取り出し、
「メレア公爵様の領地に着いたら、これで布地を買ってまどかにウエディングドレスを縫ってやってくれないかい」
ずしりと重い巾着を女の手に置いた。
「だって、あんた、これは父さんの墓を建てるためにあんたがこつこつ貯めてきた金じゃないか」
「いいんだよ。父さんの骨はエレクトロン海に散骨することにする。私たち、年がら年中琥珀海岸を巡業してるんだもん、その方がいつでも会えるしさ」
「そりゃあそうかもしれないけど」
カンナは巾着を握り締めた。
リダの、マドカへの思いやりが健気でたまらない。
「なに湿ってんのよ、お袋さん!私なら大丈夫だって言ったでしょ。それよりあのバカ、放っておいたらまたどこへふらふら行っちまうかわかんないじゃない。早いとこマドカにウエディングドレス着せて教会へ放り込んでやらなくちゃ」
「あんたって娘は・・・・」
「頼んだよ、ウエディングドレス。とびっきり素敵なのを縫ってやってちょうだい」
目頭を押さえるカンナを後に残し、沢を岩伝いに跳びながら野営地へ昇り始めた。
黒く鋭いブーツは猛獣使いの男物だ。
(私にはウエディングドレスの真っ白な靴なんか似合うはずないな)
とりとめもなくそんなことを思いながら沢を登り終えたとたん、胸にじんと焼きゴテが押しつけられた。
苔むした大木の根っこに、キツネ髪の若者が腰掛けていたのだ。
リダは心の中で舌打ちした。
今朝だけは顔を合わせたくなかった。
(たった今、カンナに平気だって豪語したばっかりなのに、なんなの、この鼓動は。鎮まれ、私の弱虫な心臓!)
足早に通り過ぎようとした。髪を麻ひもで結わえていたキャスケードが目を伏せたまま、ぼそりと言った。
「なんで俺を助けに来た」
リダは歩みを止めてしまった。
「厄介ばらいできるチャンスだったのによ」
「マドカのためよ」
「ダチのために命賭けたってわけか」
アイスブルーの不敵な目がリダを見上げた。
何?この剣呑な光は。これがマドカと甘い夜を過ごした眼だろうか。
心なしか苦しそうだ。
「記憶が戻ったの?」
思わずリダはひざまづいて若者の顔を覗きこんだ。キャスケードは答えない。
「まさかマドカを捨てていったりしないだろうね」
「そんなにあいつが大切なのかよ」
「当たり前よ。親友だもの」
「親友?ダチなんてそんなに信用できるかよ。―――――――裏切られたことがねえからそんな口聞けるんだ」
「やっぱり何か思い出したんだね」
リダの強い視線から逃れるように、キャスケードは立ち上がった。
「クローンってオリジナルのハラにゃ逆らえねえのかな。どう思う?団長」
「さあ、クローンには会ったことないから」
質問に答えることより、彼から団長と呼ばれて、リダはしゅんとした。
「あんたの過去は知らないけど、マドカを泣かせたりしないでよ、絶対」
「ムカムカするぜ、あんたのそのダチ思いを装ったツラがよ!」
若者の両手が猛禽の爪の様にリダに襲いかかってきた。不意をつかれ、リダは根っこの向こう側の窪みに押し倒された。
荒々しく唇を奪いながら、若者の左手はすでにジャケットの中の乳房をつかんでいる。
リダのこめかみがざくざくと音を立てた。
「素直に言えよ。マドカなんかのためじゃない、私が助けたかったって!俺のこと好きで好きでたまんないのよって!」
「な・・・・」
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「裏切らせてやろうじゃねえの。女同士の友情なんか砂糖菓子よりもろいもんよ、男同士だってな!」
リダの鼻孔に苔のむせる香りが満ちた。いや、苔ではない。この若者の匂いだ。言葉は残酷なのに、この手のしなやかさはどうだろう。まさに蘭の花びらにからみつかれるようではないか。
ベルベットの花びらに――――――。
頭の芯が蕩けかけた。
―――――――が。この行為が愛ゆえでないことだけは明らかだ。
マドカを裏切ることよりも、それが何より嫌だった。リダは死ぬ思いで理性をかき集めた。
「やめて、キャスケード、やめなさい!」
「やなこった」
「この声が聞こえないの?」
「なに?」
キャスケードはリダの肌から唇を離した。
頭上から薔薇豹の唸り声が忍び下りて来た。
「あいにくエクリュドが昨夜この樹の上で眠っていたのさ。私の命令ひとつで飛び下りてあんたの喉元に牙をくいこませるけど、かまわない?」
「俺はかまわねえが、あんたはいいのか?」
紫の瞳とアイスブルーの瞳がぶつかりあった。
「このワル!」
リダは相手の顔にツバを吐きかけた。
「あんたを教育したのはどこの誰だろうね。顔が見たいよ、まったく!」
とたんに、リダを押さえつけていた力が遠のいた。若者のおもては年端のいかない少年の物悲しく頼りなげなものに変わっていた。
「信じてた・・・・」
「え?」
アイスブルーの瞳を縁どる長いまつげの先に涙の雫がふくらみ、リダの頬に落ちた。
「ガキの頃からすべてをゆだねて信じきっていた・・・・。俺の相棒、俺の兄貴分、俺の悪友、生まれて初めて心を許した、たったひとりの俺の――――――」
「ジャレツ?」
リダが洩らした名前にキャスケードは敏感に反応した。
「どうしてその名を」
「あんたが口走ったのさ。マドカの催眠術で過去を探ろうとした時」
「・・・・・そうか」
彼はまた身をひきしぼるように苦しげによじらせ、深い思いに沈んでいこうとする。
「その人との間に何があったの?」
「何が、だって?」前髪から透かし見えた眼は獣のように光っていた。「俺のカルイおつむで説明できるかよ、そんなこと」
ひとしきり遊んだおもちゃに飽きてしまったようにリダを解放すると、木立の間から射し初める朝日に背を向けた。
「キャスケード・・・・?」
リダは茫然と見送った。




. 小説「碧き琥珀に眠れ」第19回

旅が再開された。
総督からの追っ手を用心して、このまま百姓馬車を装っていくことにする。夜の旅はかえって目立つので、昼間、他の旅人と同じように街道を辿ることにした。針葉樹の森を貫く街道を抜ければ、道は悪いがメレア公爵領までは最短距離である。
日が暮れるとキャスケードの特訓だ。
ゼンマイ仕掛け人形だった以前とはガラリと変わって、彼は自分から精を出して軽業の修行を始めた。トンボはきれるし、お手玉、綱渡り、玉乗り、なかなかスジがいいと師匠のタルタルーガも褒め、熱心さに安心もした。
キャスケード本人は練習を楽しんでおり、
「いやあ、パルドをさしおいて一座の花形になっちまったらワリイな」
などと冗談を飛ばしては周囲を笑わせる。
和やかな旅の日々が過ぎていった。
明日はメレア公爵の城へ到着するという日、一座は牧人から羊を買い、焚き火を囲んで舌鼓をうった。羊肉が美味そうな肉汁を滴らせて焼け、皆の杯も景気よく空けられる。
焚き火が冷気の森の中に薔薇のように咲いて、皆の顔を虹色に染めた。

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ロピがすまし顔でキャスケードの皿から肉を横取りした。
「かっわいくねえな、てめえ」
キャスケードは素早く取り返す。
「へん、よく喰うからさ。あんなへっぴり腰の綱渡りでムダ飯喰いが返上できると思ったら大間違いだからな!」
「なにを、このチビ」
「やるかっ」
本気でいきり立つふたりをカンナが笑いながら座らせる。
「肉ならたっぷりあるから仲良くお食べ」
タルタルーガも少年を膝に乗せ、
「ロピ、そりゃキャスの技はまだまだだが一生懸命練習してるぞ。いい亭主めっけたぜ、お前の母ちゃんは」
「やっだあ、タルタルの師匠ってば、亭主だなんて気が早いんだから、もう!」
ほろ酔いかげんのマドカは幸せいっぱいに輝いていた。リダが見ても、十年くらいは若返ったと思う。
「後は、美人のリダは心配ないとして、パルドの嫁さんめっけてやらなけりゃ、俺は死ぬに死ねねえぜ。な、パルド!」
「△◎×▲!」
タルタルーガに勢いよく肩を叩かれ、肉を詰まらせたパルドッサムは首筋まで真っ赤になったので、一同はどっと笑った。
「リダ、これでよかったんだね」
カンナが密やかに告げる言葉に微笑み返したものの、リダはひとり複雑な思いをかみしめていた。
先日のキャスケードのキスの感触がはっきりと唇に残っていた。それより、あの時あふれた彼の涙。キャスケードはあの涙を忘れてしまおうとして、明るくふるまっているように思えてならない。
(やっとマドカのつかんだ幸せが消えてしまいませんように・・・・)
リダの祈りはしかし、叶えられなかった。
一座がそろって和気あいあいと食事をしたのは、この夜かぎりとなってしまったのである。

* ****************************

街道を挟んで商人の馬車の一団が野営していた。
主人らしき男は真円の黒眼鏡にあごひげの、商人にしては愛想のかけらもなさそうな中年男である。
ぽっかりと開いた地獄の落とし穴を思わせる真円の黒眼鏡が、街道の向こうの野営地を凝視している。
木立を抜けて、時折暖かい笑い声が流れてくる。
(泳がせるだと?甘いな、モーガイ。俺はたとえ狼に臓腑をえぐらせてでも皇帝陛下のご面前に獲物を持参するぞ。ジャレツに嗅ぎつけられんうちにな)
車座になって待機していた仲間にあごで合図を送る。
とうてい商人とは思えない殺気を帯びた男たちが、音も無く闇の中を動き始めた。


. 小説「碧き琥珀に眠れ」第20回

    第 五 章  懐かしい呼びかけ


琥珀城と呼ばれるメレア公爵の城下に入って何十日になろうか。
船で遭難した相棒の行方を捜すため琥珀回廊にやってきたジャレツだった。
とはいえ、十年前、祖国、竜蛇を亡命―――――――それも軍を出奔して捨てた立場ゆえ、もし竜蛇軍に見つかればまずいことになる。
回廊が竜蛇に割譲されている今、思うように動きがとれないのがもどかしい。
エレクトロン海には艦隊が停泊し、水スマシのようにうようよと捜索の艇を放っている。
艦隊を見たジャレツの総身を、稲妻をもしのぐ衝撃が奔り抜けた。
皇帝が乗っている――――――――。
かつての主君――――――ジャレツの全てを支配したかつての神がすぐ目の前の洋上に。
彼の存在、息づかいを本能が感知した。
絶対に逢うわけにはいかない。
海岸へ近づくことはあきらめ、メレア公爵領に潜んで情報を待つことにした。
琥珀回廊で唯一、竜蛇が侵食することを遠慮している地域だったからだ。
城壁で囲まれた公爵のお膝元はなおさら安全と言えたが、支配者の地位を追われたかつての都はまるで活気がなかった。若者たちは吸い寄せられるようにエレクの町へ流れていったらしく、老人の姿が目立つ。日増しにつのる寒さも相まって、人影はまばらだ。
(それにしてもキャスの船は・・・・)
爆発炎上したという噂、時化で沈んだという噂。エンジンの欠陥で海の藻屑となったという噂・・・・。様々な情報が交錯していた。
夥しい数の犠牲者が発見されたが、いまだに遺体の上がらない人間も少なくない。
ジャレツは焦燥を抱えながら、城下の石畳をあてどなく歩き続けていた。そのうちに家並みが切れ、ひとけのない寂しい小道へ彷徨いこんでしまった。いかにも年月を経た琥珀の塀はところどころ崩れながら小道を囲うかたちで、冬さびて渇いた蔓草が幾重にもからみついている。
小道はゆるやかな上りとなって訪問者を誘うように蛇行を繰り返しつつ、延々と続いた。
空は濃い灰色で今にも白いものが落ちてきそうだ。いい加減引き返そうかと、ジャレツがジャケットの襟を立てた時、それは唐突に道の突き当たりに現れた。
琥珀で造られた血の色の門だった。
もう幾千年も使われた気配のなさそうな門である。少し手を触れれば全体が崩れてしまうのでは、と思われるほど、老朽していた。
しかも、中央に象嵌された竜の紋章は、竜蛇のものとは異なるが見覚えのあるものだ。
見たことがあるといえば、この遺跡を思わせる古い小道自体がそうだった。何かに突き動かされるように、ジャレツは門を押してみた。それはあっけなく開いた。
そして―――――――、
まったく突然に蘭の狂い咲く空間が眼前に開けたのだった。門を境に、真冬と真夏を、いや、現世とあの世を分かたれたかのようだ。
蘭、蘭、蘭、見渡す限りの蘭の洪水、蘭の波―――――――。蘭の楽園だ。
可憐な蘭、高貴な蘭、淫靡なおもむきの蘭・・・・。
蘭たちの圧倒的な視線に、ジャレツは息苦しくなった。
(いったい、ここは・・・・)
蘭の大群にかしずかれるように、古びた高い塔が彼方に立っていた。そして、その向こうに見えるのはメレア公爵の城であるらしい。
しかし、蘭に埋もれた礎石はとてつもなく歳月を経た琥珀であることを察せられ、メレア公爵城とはおもむきを異にしている。
花園のすぐ外からエレクトロン海の荒々しい怒涛が聞こえてくるここはどうやら岬の突端であるようだ。
そして、この園に確かに見覚えがある。どこでだったろう。いつだったのか。
蘭の香りにむせながら、愛しい女を腕にしていた。狂おしく求め、求められた熱い記憶。しかも禁断の鎖にしばられ、人目を忍び、それでも愛さずにはいられなかった・・・・。
あまりにも遠い記憶、遠い時の彼方の出来事だ。


. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
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