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浪漫@kaido kanata

. 小説「中天より地平へ」  第5回

奏姫は侍女を遠ざけ、まったくのひとり歩きを楽しんでいた。…と、思わずその足を止めた。
池のほとりに黒龍がいる。…一瞬そう思われた。実際、その男がたたずむ様は、黒々とした龍が水面を凝視して千年もそのままの姿でいるようであった。が、彼は奏姫に気付くと急いで両膝を地に着き、袖に入れた両手を額につけた。

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                                     (イラスト・まもと鶴)
「寧波からずっとご一緒でしたね」
奏姫はこの豊かな顎鬚の男に今初めて声をかけた。
「は」
男は短く答えた。
「面を上げてお立ちなさいませ」
「は」
間近で立ち上がった男は見上げるほどの長身であった。そして驚いたことに、遠目で見ていた時より、実際はまだ若いらしい。
「まだ私の警護は終わっていないのですね」
「はい。都に着いてから配下を増やし、この離宮を守っております」
声もまだ若い。
「何ゆえ」
「近頃、龍頭賊の動きが激しいからでございます」
「龍頭賊?」
「盗賊…いや、反乱の輩のようなものでございます」
「それで、いつまでも物々しい気配なのですね。でも…不愉快です。そなたはあまりにも私を監視しすぎています。今もこうして…」
「恐れながら」男は姫の言葉をさえぎった。「私の任務は姫さまのご警護ではございませぬ」
「何と?」
「私は姫さまの監視などいたした憶えはございませぬ」
「一体そなたは」
「錦衣衛官の臥龍と申します」
「錦衣衛官…」
その機関の名を奏姫は聞き知っていた。皇帝直属の諜報特務機関である。
錦衣衛は、全ての行政機関の長官や役人、商人、果ては庶民までもその厳しい監視下に置き、ほんの少しでも皇帝に逆らう様な行動を認めると厳罰に処した。この錦衣衛の長官にも宦官が就き、永楽帝の行う恐怖政治の強引な骨組みを成している。
「では、そなたのお役目は私の警護をしている役人の監視なのですね」
「左様にございます」
臥龍と名乗ったその男は、真直ぐに奏姫の眼を見つめて応えた。口調は丁寧であったが、その視線は上から見下ろす形になるため、奏姫には世間知らずの自分をからかっているかのように感じられた。
=====<中天@編集部作品>=====
原作・監督・総指揮・キャラクター原案 ...海道 遠(YUB)
校正・リライト・挿絵 ...まもと鶴


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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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