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浪漫@kaido kanata

. 2012年 WHITEDAY記念短編「キスでチョコを私から」4

 また、次の年の バレンタインがやってきた。


 洸は 勤め先のホテルで 見かける 美流の父親の秘書に近づき、思いきって尋ねてみた。
「お嬢さんは、最近、見かけませんが、どうなさっているのでしょう。あ、ボク、怪しい者じゃないです」
 父親が気づいて振り向いた。
「もしかして 洸くんじゃないかね?」


 恰幅の良い、紳士にいきなり尋ねられて、洸は 慌てた。
「ど、どうして ボクのことを??」
「娘がメールではなく、手紙を送ってきた。ひとり暮らしを始めたいきさつをね。君がワガママ娘の目を覚まさせてくれたようだな」
「ひとり暮らし!?」
「ああ、一年前から 大学も休学してな。私からも礼を言うぞ、洸くん。娘は君のおかげで成長した。外の風に当たることが出来た」
 ぼん、と 両肩に大きなごつい手のひらを置かれた。

「で、彼女は 今、どこに?」
「それは 言えんよ。君には告げるな、と 手紙に書いてあった」
 いてもたっても いられなくなった洸である。相変わらず、パティシエ修行の日が続いている。


ホテル 1




 製菓教室の修行は 生易しいものではない。
 洸は 実は スイーツなど、大嫌いだが、三年前に 交通事故で失った彼女が、大好きだったのだ。
突然の高速玉突き事故、殆ど 即死状態。彼女ひとりでハンドルを握っていた。



あおいちゃん 1



 そのうち、無理矢理、約束させられた 彼女のお気に入りのスィーツも、食べに行けずじまいだった。
 言い表せないほど、重くて大きい悔いが残った。
 彼女の供養をすませた後、その店へ食べに行き、このスィーツに負けないものを自分で作って 弔う気持ちになったのだ。そのために、理数系の大学も中退して、製菓専門学校へ入学しなおした。

 夢中で製菓を学び、ようやく彼女を喪った哀しみから 立ち直りかけた時、見かけたのが 美流だった。
 亡くなった彼女と 似ていたわけではない。亡き彼女の方が すでに立派な社会人で、OLとして働いていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 世間が騒ぎすぎる バレンタインも過ぎ、あっという間に3月14日のホワイトデーが近づいてきた。
 パティシエは 一年以上も前から 企画に取り掛かり、試作を繰り返して、売り出す商品を会議で決める。洸の勤めるホテルでは、パーティーや ラウンジでのオーダーにも 応じる。
 ホワイトチョコケーキが メインの品だ。 スタッフ一同、全力を尽くしてきた。

 Wケーキ 2

Kittyケーキ

(サービス)

  猫 ゆうわく




 そして、14日がやっと 過ぎ、洸たちも ひと息ついた。

 やっと、ラウンジの閉まる時間が来て、後始末の作業に入り、最後に 洸が残った時だった。
 深夜近く、真っ暗なホテルの周囲、街灯は灯っていても、寂しいものだ。
洸は背後に 気配を感じた。

みれい 正面



       純白の妖精―――!?


 その姿は ふわふわのフェイクファーの短い丈のジャケットコートと、下には オフホワイトのシルクのワンピ。腕には、ファーのボンボンのついた シュシュをはめている。結い上げた髪の毛にも。
「美流さん……」
 初めて、その名を呼んだ。
「私のこと、覚えてくれていたのね」
 にっこり 笑う彼女の顔は すっかり 一年前より 明るくなっていた。
「どうしていた……」
「これ、受け取ってくれる?」
美流が差し出したのは、小さなハコ。
「一ヶ月遅れのバレンタインだけど……。私が作ったの」
 洸は 急いで包みを開けた。そこには、女の子らしい チョコが入っていた。

ブタちょこ


    
 つまんで口に入れる。なんともいえず、甘くて、過去の哀しみを想いおこさせるような ほろ苦さも混じって、それが 蕩けた。
 洸が素直に 合格点をあげられる。

ありがとう はるま


「うまいよ」
「ありがとう!!」
「でも、今日のホワイトデー、何も用意してないけど……」
「いいの。もう一個、受け取ってもらえれば、それで」
 言うなり、いきなり 純白のファーの付いた袖が、首に巻きついたと 思うと、薄桃の唇を重ねてきて、洸の口の中に、もう ひとつ チョコを送りこんだ。

キス★


 再び、チョコの余韻と、しなやかなオフホワイトのコートのままの彼女の身体のしなやかさを味わった。
 粉雪がちらつき、夜の空気に早春の匂いが 立ち込めていた。

          
                               終わり。

<イメージ キャスト>

 洸 ―――――――― 三浦春馬
 美流―――――――― 桐谷美玲

 美流の元カレ―――― 山本耕史
 洸の元カノ ―――― 宮崎あおい

 美流の両親 ―――― 二谷英明、白川由美 


~~~~~~~~~~

★ ご愛読くださいました 読者さまに 感謝申し上げます。


と、普通は こういうHAPPYENDで めでたし、めでたし
なんですけど、ドSの作者としては、物足りないんですよね。

 ここから、実は 美流が 洸に食べさせたチョコには 洗脳能力が
 潜んでいて、自分をフッタ 元カレに 復讐させるとか !!

 父親の会社の跡継ぎに 美流が就任して、製菓業界を乗っ取るとか !!

 妄想が 勝手にボウソウする人間は これだから いけませんな。

 上記、本文のイメージを ぶっ壊すので、
 読まなかったことにしておいて くらはい (汗)

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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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