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浪漫@kaido kanata

. 「スプリング・フォンデュを君と」第7回


「この前の返事、聞いてもいい?」
 桃の声に気づいて、すみれは思わず園舎の陰に身を隠した。


幼稚園 2

 今日は、付近の幼稚園の写生会、絵本読み聞かせの会に来ている同好会だ。
 午前中、桃がいきいきと園児たちに絵の描き方を教え、教室では、絵本の読み聞かせ。大盛況だった。
 それは、本運びくらいしか手伝えなかった、すみれの目から見ても、とても和やかな情景だった。子ども好きな桃の人柄が、よく分った。その行事の終わりのことである。

幼稚園 1

 桃は幼稚園の中庭でひとりの若い幼稚園教師と向きあっていた。
 ハッと気づいたすみれは、咄嗟に木の幹の陰に隠れた。
「あなたが子どもたちに優しい人だってことは、よく知ってます。でも、あの……」
 二十歳くらいの彼女は、明らかに困っていた。

新垣結衣 2

「おつき合いするのは、申し訳ないんですけど」
「ダメですか!?」
「あなたは子どものことしか考えてませんよね。大きな病院のひとり息子さんだとも聞きました。でも、その、ご趣味が、囲碁だとか、ゲートボールだとか、いえ、そんなことはどうでもいいんです。けど、私みたいな平凡な女が、相手では、競争に勝てません」
「俺がそんなうわついた男に見えるんですか」
「いいえ、でも、私に自信が無いんです。あなたのような方とおつき合いを続けていけるのかどうか。ごめんなさい!!」
「あっ……」
 教師は、深々と頭を下げてから、桃が引き留めるまもなく走り去った。
 桃は側に生えているケヤキにもたれかかって、ガックリ肩を落としていたが、すみれが庭の隅にいるのに気づいた。
「アハハ、カッコ悪いとこ見られた」
「その顔が裏目に出ちゃった?」
「何回、こんな目に遭ってることか……」
 しゃがみこんで、世界も終わりのような深いため息をついた。
(桃兵衛には、桃兵衛の悩みがあるんだ)
 その背中を撫でてやりたくなった、すみれだった。


            ☆


「ぎゃああああぁぁぁ~~~~~~~~~!!」
 ある朝、すみれの自宅のある住宅地に恐怖に満ちた悲鳴が響き渡った。

住宅街 2

「どしたの、すみれ!!」
 洗面所に駆けつけた母親は、持っていたオタマを落とし、父親は髭剃りを持ったまま、スネ毛丸出しの格好で立ち尽くした。


                ☆


 今日の同好会の行事予定は、幼稚園との親睦会だった。
 旧暦の端午の節句に合わせてスケジュールが組まれたのだ。


鯉のぼり

 同好会のメンバーは、集合場所にやってきたすみれを見てぎょっとする。
 ミイラのように、頭すっぽり包帯でぐるぐる巻き、その上から元のサングラスまで
 はめている。
「ど、どうしたんだい、すみれちゃん……」
 一同、呆然である。
 すみれと一緒に来たツバキが、素早く桃のウデをつかんで、すみれと共に木立の陰へ引っ張ってきた。
 そっと、すみれの包帯を外すツバキ。
 そこに現れたのは、元の顔立ちがまったく解らないほど、ムラサキ色に腫れあがったすみれの顔だった。まるでドッジボールのおはぎ!!??だ。
「こ、これは……」
「あなたの作った軟膏のせいとしか考えられないわっ!こんな顔で幼稚園児さんが、気絶でもしたらどうすんのよ!」
「……」
 蒼ざめる桃。
「もっ、申し訳ないっ!オレの自転車で送らせてくれ!ご両親にも謝りたいっ」

ロードバイク

 すみれは言うとおりにした。
 桃はすみれを後ろに乗せるや、疾風の速さで祖父の病院の皮膚科へ寄り、すみれに受診させた。
 皮膚科の医者は、丁寧に診察した。
「桃へえくん、君はまだ医者のタマゴだ。自分で独自に作った薬を患者に使わせるのは良くないねえ」
「す、すみません、以前、ノラネコの皮膚ただれに塗ってやったら治ったもんで」
 それから、スミレの自宅へ彼女を送っていき、玄関で彼女の両親に土下座した。
「申し訳ありません!大切なお嬢さんの顔をこんなにしてしまって。出来るだけの償いはさせていただきます!!」
「あ、いや、手をあげて……」と父。
「どうしてくれるの、あなた、嫁入り前の娘の顔を……」と母。
「ママたち、よしてっ!」
 すみれは二階の自分の階段へ駆け上がり、カギをかける。
「誰も来ないでっ!!」
 桃は、うなだれて引き下がるしかなかった。


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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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