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浪漫@kaido kanata

. 「遠雷 去らず」第2回

 義村は歴戦の武者である。が、いかつい容貌の中にも瞳の奥に愛息を眺めるまなざしの中に優しさが満ち溢れている。
「駒若よ、長きにわたる修行と出仕、ご苦労であったの。」
 傍らに座する母親もその美貌変わらず、溢れる涙を袂で押さえている。
「父上、母上、駒若、ただいま戻りましてございます。ご健勝のご様子、何よりと存じます」
 駒若丸は頭を下げた。頬で切りそろえた髪もサラリと顔面を覆って落ちる。
「此度の乱闘騒ぎ、面目次第もございませぬ」
「それは、気にせすともよい。そちは三浦の名誉のためにやんちゃを仕出かしたらしいではないか。少し見ぬ間に、やや大人になったようじゃな」
 兄の泰村が足音も高く入ってきた。
 この兄は、駒若丸にとり幼き頃より頻繁に八幡宮の公暁家にも書状をくれた弟思いの男である。同腹ということもあり、駒若丸は父と共に全信頼を置いている。
「駒若、ずいぶんと成長したではないか。他家での修行もムダではなかったようじゃな」
「兄上のお役に立てるよう、ここ数年、精進してまいりました」
「よう言うた」
 兄の泰村は日焼けした顔で相好を崩し、しげしげと弟を見やった。
「そちはいつの間にやら武芸だけでなく、琴にも長けていると評判であるそうではないか」
「そのような、とんでもございませんぬ。若輩者の私など」
「ううむ、この上はすぐにでも元服させねばなりませぬな、父上」
泰村は父の義村に言った。
 誰にも異存は無かった。
 さっそく、駒若丸の元服の手配となり、暦師が呼ばれ、日程も決まった。


 当日、駒若丸の長い髪は切り落とされて結いあげられ、少年の衣とも別れ、正装の直垂(ひたたれ)を身につけた。金糸銀糸の刺繍が入った素晴らしい衣装である。


元服

 名も三郎光村と改められた。
 光村となった駒若丸は、侍女から鏡を見せられた自分の姿を見て、少し照れくさく思ったが、これで一段大人になれたと思うと心が熱くなった。





        第 二 章



 一二一九年一月二十七日のことである。
 将軍、実朝、右大臣拝賀のために鶴岡八幡宮へ社参した折、別当の公暁が執権、北条実朝を殺害。
自身も直後に殺害される。
 この時、光村はまだ十四歳。かつて仕えていた公暁が、まさかこんな暴挙に出るとは、衝撃は隠せなかった。

 一二一九年、承久の乱、勃発。
 光村にしてみれば、この大乱は父の泰時の時代のことであるが、この乱を抜きにして鎌倉史は語れぬと判断したので、簡略に書き添えておく。

 三代将軍、源実朝が甥の公暁に暗殺された。
「官打ち」(身分不相応な位に登ると不幸になるという考え)などの呪詛、調伏の効果であり、後鳥羽上皇は実朝の死を聞いて喜悦したという。
 後鳥羽上皇は武家政権との対立ではなく当初は公武融和による政治を図っており、そのために実朝の位を進め優遇していたとの見方が強い。
 彼の将軍継嗣問題については、諸説あり。
 彼は三浦義村をはじめ幕府の有力御家人には格別の院宣を添えて使者を鎌倉へ送った。特に三浦義村については弟の胤義が、
「実朝後継の日本総追捕使に任ずるようなら必ず味方しよう」と約束しており、おおいに期待されていた。

 同年五月十四日、後鳥羽上皇は「流鏑馬揃え」を口実に諸国の兵を集め、北面、西面の武士や近国の武士、大番役の在京の武士千七百騎が集まった。


鶴岡八幡宮 流鏑馬 1

 上皇はさらに、諸国の御家人、守護、地頭らに北条義時追討の院宣を発する。同時に近国の関所を固めさせた。
 京方は院宣の効果を絶対視しており、諸国の武士はこぞって味方すると確信した。
 上皇、挙兵である。

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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
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OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
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家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
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技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
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結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
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諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
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