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浪漫@kaido kanata

. 「遠雷 去らず」 第1回

     ま え が き

 理由もなく、詳しくもないのに、なんとなく好きな鎌倉~室町時代の資料を当たっていたら、
鎌倉幕府の御家人、三浦一族に出会ってしまいました。
ソッコー、その中の三浦三郎光村という人物に惹かれました。
 何故かというと、最後まで読んで下さるとお解かりになるでしょう。
 無い知識を振り絞り、妄想半分以上で補った作品です。




「遠雷去らず」


    序

鎌倉鶴岡八幡宮 3 桜



頭上には若葉の天井が広がっている。
 だというのに、どこかから枯葉が騎乗している黒鹿毛の愛馬の紫の紐を編み込んだたてがみにはらはらと舞い落ちてきた。

馬 青毛

 光村の脳裏に幼き日のことが甦っていた。
 広大な鶴岡八幡宮の境内、掃いても掃いても、降るように落ちてくる銀杏の鮮やかな黄色い落ち葉。
 疲れてぼんやりしていると、先輩の若い修行僧の叱咤が飛んでくる。
「これ、駒若丸、何をぼんやりしておる」
 駒若丸は、はっと我に返り、冷たくなった手に息を吹きかけ、小さな手で竹箒を握りなおす。
 僧侶になれと父親から命令され、鶴岡八幡宮、北条家の公暁の元で修行はしているが、まだ俗世のなりのままだ。
 耳の奥から母親の言葉が響いてくる。
「御身は由緒正しき、鎌倉将軍家創立の時代からの祖を持つ一族の流れを継ぐ三浦一族の嫡流、三浦義村の四男。しっかりお勤めしてくるのですよ」
 黒髪豊かな、まだ美しい母親は涙をためて幼い小素襖(こすおう)姿の愛息の両頬を白い手で包み込んだ。



 時は鎌倉末期。
 鎌倉北条氏の初代と主張した執権、北条泰時が政事の実権を握っていた。
 泰時の父の法名は『得宗』といい、以降代々の北条氏の家督は『得宗』と呼ばれ、その家系は『得宗家』となった。
 対立したのは、泰時の弟、名越(なごえ)流、北条朝時(ともとき)である。真の初代は時政であると主張、また泰時は同族のうちに対立者を持っていた。幕府の御家人のうち幕閣最大の豪族、三浦氏である。
 駒若丸―――後の三浦三郎光村はその一族に生を受けた。
          



 第 一 章


一二一三年(建保元年)、三浦氏と祖を同じくする和田氏が乱を起こした。しかし、失敗に終わり、和田氏は滅ぼされる。
 和田義盛が任ぜられていた幕府の侍所の別当の職が北条義時のものとなり、御家人動員の権限が北条氏の手に握られてしまった。
 乱後、鎌倉に西北方で隣接する相楽山山荘が北条氏領になった。後に言われる和田合戦である。
 これで「いざ鎌倉」という時、北条はすぐに鎌倉内に麾下(きか)の兵力を入れることができる。
 その噂は、幼い駒若丸にも自然と耳に入った。深刻であることは、こども心にもよく感じ取れた。
 執権、北条氏と三浦氏との対立が本格化したことを意味するのである。

一二一八年(健保六年 九月)、十三歳となっていた駒若丸は、三浦一族としての自分の立場をはっきり自覚していた。
(このまま公暁様の元で門弟でいていいのだろうか)
 と、焦りを覚えていた時のことである。
 日課である廊下拭きの最中に、同じく門弟として出仕している他家の少年たちの談笑が耳に入った。
「名越(なごえ)と三浦はとうてい『得宗家』には逆らえないのに、ムダなあがきをしておるそうな」
「ネズミが獅子に歯向かうようなものだな」
 思わず、カッとなった駒若丸は、少年たちに歩み寄るなり、ふたりの少年を殴りつけた。
「三浦の悪口だけは許さんぞっ」
「何を生意気なっ、本当のことを言うたまでのこと」
 相手の少年も殴り返し、廊下の欄干に後頭部を打ちつけた駒若丸は、よけい頭に血が昇った。
 三人が乱闘になったところへ、それに気づいた若い修行僧も何人か駆けつけて止めに入り、騒ぎは大きくなった。


 直後、駒若丸は、鶴岡八幡宮への出仕を停止させられた。
 機会が悪かった。騒ぎは将軍御所での歌会の最中だったのである。
出仕停止命令は、あくまで穏やかなものであったが、公暁の怒りを買ったことは間違いない。


 ある日、幼い駒若丸は仕えている別当の、公暁の側近に呼び出された。
 黒光りした、ひんやり感じる廊下を素足で歩き、座敷の一角に着くと、側近がドジョウヒゲをいじりながら待ち受けていた。
「来たか、駒若丸」
「はい」
 駒若丸は長い黒髪を束ねた姿で行儀よく座った。
「御身の家から、戻るよう書状が届いた」
「えっ、それは誠でございますか」
「そろそろ元服もせねばなるまい。御身はよう仕えてくれたと公暁様も仰せであった。三浦の本家でお父上、お母上もお待ちかねじゃ」
 駒若丸の眼がいっそうきらきら輝いた。これで、僧侶とならなくて済む。
「長きに渡りお世話になりました。こちらでの修行の日々とご恩、この駒若、一生忘れは致しませぬ」
 急いで身の周りの物を荷造りして数人の供を連れ、懐かしい生家への道を辿り、三浦家へ戻ったのは、もう夕刻であった。すぐに父親の義村の呼び出しを受けた。

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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
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家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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