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浪漫@kaido kanata

. 小説「碧き琥珀に眠れ」第9回

夜更け、がらんとした観客席に鞭をだらりとさげたまま、リダがうなだれていた。
 小猿を肩に乗せて狭い手組みの階段を昇ってきたのはカンナだった。
 「どうしたの、リダ」
 「ああ、カンナ」
 リダは弱弱しく微笑んだ。
 母親のようなカンナのけむるような笑顔には素直になれる。
 カンナは隣に腰掛けると出しぬけに、
 「恋だね?」
 とたんに女団長の銀青色の髪が逆立った。
 「な、何のことさ」
 「ばっくれても駄目さ」
 「私が何年オンナやってきたと思ってるんだい」
 リダは口をもごつかせたが、無駄な抵抗と悟ったのか、照れくさそうに微笑んだ。
 「変だよね。私みたいなオトコ女があんな得体の知れない、それも年下の若造にさ」
 「ちっとも」
 「つらくあたるつもりはないんだ。でも、マドカがあれこれ世話やいてるのを見ると、もう駄目」
 「恋とヤキモチはポジとネガだからねえ」
 リダは大きな息を吐いた。
 足元に寝そべっていた薔薇豹がぴくりと耳で返事した。
 カンナは歳とった女らしくしみじみと、
 「確かに若い女には眼の毒さね、あの子は。いったいあの子のおっかさんは何を食べてあんな美しい子を産んだんだろうねえ」
 「ツラじゃないんだ。あいつの瞳が」 
 「瞳が?」
 「深すぎる。優しすぎる。あれは、誰かに愛されてつちかわれた眼だ」
 「でも、親は無いって」
 「誰か――――――親や恋人より、あいつを愛している誰か、だよ。私はマドカによりもその人間に嫉妬しているのかもしれない・・・・」
 リダのアメジストの瞳は遠くを眺めた。
 「困ったねえ、あんたたちを赤ん坊の頃から見てきた私としちゃ、どっちにも恋を成就してほしいんだけど」
 「私そんなこと思ってやしない。私には父さんから受け継いだこの一座を守っていく義務があるもの。愛だの恋だのにうつつをぬかしているヒマなんかないんだ。このことは今夜かぎり忘れて、カンナ」
 鬼火のような眼光を発して、リダはカンナを真っ向から見据えた。
 「リダ、あんたそれでいいの?」
 「顔を合わせちゃケンカしてるけど、マドカは大切な親友だ。先の戦争で竜蛇の前線基地へ慰問させられた時、やつら私に夜の伽までさせようとしたこと知ってるだろ、カンナ。あの時、私に指一本触れさせまいとしてマドカが一手に引き受けてくれたんだよ」
 「・・・・・・」
 「そんな彼女の本気の恋を、私が奪ったりできると思うかい、カンナ」
 「リダ・・・・」
 「突発事故さ、番狂わせ。起こるはずのないことなのさ」
 肩をそびやかして立ち上がると、薔薇豹を従えて客席の陰で偶然聞いてしまった人間がいた。
 荒業師パルドッサムだった。
 どんな危険な仕掛けにも動じない心臓が、氷の衝撃に貫かれた。
 (そうだったのか、それでリダはあの若造につっかかっていたのか・・・・!)
 矛先は若造に向けられた。
 (あんの野郎、ロピを悲しませるばかりか、リダの純真までもてあそびやがって)
 岩塊のような拳が握りしめられた。


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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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