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浪漫@kaido kanata

. 小説「碧き琥珀に眠れ」第5回

メレア公爵の城めざして一座の旅は続いた。
 冬狼のあぎとに捕らえられる前に、南下しながらできるだけ巡業して稼ぎ、公爵の城で越冬させてもらうのが例年の決まりだった。
 リダの亡き父親、先代団長は若い頃にメレア公爵家のお抱え芸人だった。そのおかげで今もリダたちはその恩恵を受けることができるのだった。
 立ち寄る村々で巡業が行われ、農閑期の村人たちは胸はずませて見物にやってくる。
 スノーバードの都や、回廊都市から遠く離れたこの地方にはこれといって娯楽がなく、また農民たちは貧しくて都会へ出かける余裕もない。
 即席の巨大な天幕が張られ、一座の巡業は始まる。
 まず、マドカをのぞく全員が一輪車に乗っての挨拶がファーストプログラムだ。
 次にタルタルーガがくす玉みたいなフリルだらけの道化姿でお手玉、玉乗りの技をたくみに披露し、続いて彼のつれあいカンナが小さな動物たちの可愛い芸当を見せる。共に五十歳近い彼らは、リダの父親の代からのベテラン芸人だ。
 そしてマドカが蘭のマジックで観客を感嘆させ、リダは革のジャンプスーツに身をかため、鞭をうならせて薔薇豹に火の輪くぐり、牙にキスなどをしてみせて、やんやの喝采を浴びる。
 最後にパルドッサムが鍛えぬいた体躯で堂々と登場し、火吹きや剣を使ったアクロバットで観客を唸らせる。
 出演者以外が裏方をこなして、上演中は全員が大車輪だ。ロピもマドカやタルタルーガのアシスタントを努めたり、客席へ菓子売りにまわったりと、よく働く。
技もさることながら、彼らのチームワークは見事だった。たった六人の一座だからこその結束力とも言える。
 そんな中、キャスケードだけは大道具の陰でぼんやりと座り込んでいた。
 カツカツとブーツを鳴らしてリダがやってきて、怒鳴り飛ばした。
 「何をぼさっとしてるんだい、ムダ飯喰いは許さないと言ったろ!」
 たっぷり雑用を言いつけた。
 慣れぬ小道具の段取りにうろたえたキャスケードは、何段にも詰まれたインコの籠を崩したり、くす玉を破いてしまったり、あげく犬の糞を床にぶちまけてしまったり――――――と、ヘマを連発してしまった。
 「片付けひとつ満足にできないのかい、この役立たず!」
 リダの怒鳴り声を聞きつけて、マドカがローズ色のラメ入り衣装のまま駆けつけた。
 「なんてことさせるの、リダ!キャスはまだ身体が完全じゃないんだよ」
 「どこが完全じゃないのさ。おつむ以外すっかり元気じゃないか」
 「鬼みたいな女だね、あんたって。こんな痛々しいキャスケードに働けだなんて。大丈夫?どこも痛くないかい」
 マドカは若者の肩を抱き大袈裟に気づかう。
 「働かざるものなんとやら。今度、さぼっているところを見つけたら、すぐに奴隷市場で売り飛ばしてやるからね!」
 紫の瞳をとげとげしく光らせて、リダは背を向けた。
 マドカは思い切りあかんべえを投げつけた。

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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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