三日目の朝、少年はその碧い宝玉の瞳をようやく甦らせた。
濃いまつ毛に縁どられたそれは、清清しい朝日の中で輝き、黄金蘭の花びらに乗る朝露のような美しさだった。
「キャスケード・・・・・!」
ジャレツの三日間の徹夜の疲れが吹き飛んだ。
枕もとの人物を認めたキャスケードの無我の表情に苦悩の色が浮かび、徐々に色濃くなっていった――――――――と、思ったとたん、彼は飛び起きてジャレツの胸ぐらをつかんだ。
「お前のせいだ!お前のせいで俺はあんなひどいおふくろに会ってしまったんだ!
野良猫のままでよかったのに、どうしてあんなとこに連れていったんだ、お前のせいだ、みんなお前が悪いんだ、お前なんか大っきらいだあ!」
思い切り胸板をたたかれてもジャレツは少年のなすがままにさせた。
「キャスケード、すまない・・・・」
「許すもんか、お前なんか・・・」
罵りながらもキャスケードには判っていた。あの熱い暴発のさなか、抱きとめてくれた手が真実の暖かさを持っていたこと。蘭夫人の冷たい貌なんかくらべものにならないほどの暖かさを秘めていたことを。
「お前なんか大嫌いだ・・・・」
嗚咽を繰り返しながらキャスケードの拳が解かれ、何かを求めるように宙を探り、そしてジャレツの広い背中に回された。
それを待っていたようにジャレツガ大羽根を広げるようにして、少年の華奢な身体を包み込んだ。

「母親なんか忘れてしまえ、キャスケード。これからは俺がついてる。俺がいつもお前の側にいて護ってやる・・・・」
キツネ色の巻き毛に鼻を埋めて、ジャレツは誓うように言った。
キャスケードは抱きしめていた。男の峻険な山脈を思わせる逞しい背中を、いつまでも。
―――――――両腕を組んで一部始終を見ていたアスンシオンの目が、冥い光を宿らせていた。