第三部 蒼氓編
(八)隠逸
眼光鋭く、二つの瞳が迫ってくる。記憶の中の、かの瞳は瑠璃色ではなかったか。それがいまや、炎の色に包まれている。もはや消すことのできない憤怒の炎のようだ。
怒号が響き渡った。

「あれの侍女はすべて処せ!あれに加担したものとみなしてすべて処せ!いや、それよりも早く後を追え!あれを連れずにのこのこと戻って来た者もすべて処す!すべてだ!」
彼の眉間の険しささえ生々しい。沙塞の将の、悲痛なまでの怒りが伝わってくる。自分の裏切りが、彼をここまでうろたえさせているのだ。だが、それでも、彼への後ろめたさは微塵もない。
(今度こそ、永楽帝の軍勢に滅ぼされてしまわれるがよい!)
烈しい気持ちがわきあがってくる。
(よくも、この身を汚してくれた…、よくも、ここまで偽り続けられたことよ…、よくも…、よくも…、……)
かの将帥への懐かしさなど、もはや感じようはずもなく、むしろ、憤りだけが膨らんでいく。
あの男の命など、この世に生まれ出ずることの叶わなかった命と共に砂の中に葬られるがよい。もとよりそうなることをご自身もお解かりのはず。むしろ、それが本望でありましょう…。
それでもなお、こちらを見つめる眼の光が我が身を貫く。
畏怖に終みとられる己が身が口惜しい。歯ぎしりするほどに口惜しい…。
そこへ、あの野太く懐かしい声がかすかに響く。
「中天より…」
思わず振り上げた手を何者かが握りしめた。大きな手のぬくもりが伝わってくる。
(お爺々…さま…?)
声にならない声でそうつぶやくと、懐かしい祖父の顔が浮かんできた。
「しっかりなさってください、奏姫さま」
(誰かが私を呼んでいる…!?ああ、そうなのだ。今までのことはすべて悪い夢だったのだ。あまりに明の国に憧れたために、夢の中に深入りしてしまったのだ…)
「奏姫さま!」
再び激しく呼ぶ声に、ゆっくりと目を開けた。視界がぼんやりと開け、やがて像を結んでくる。そこには、見覚えのある青年の姿があった。
=====<中天@編集部作品>=====
原作・監督・総指揮・キャラクター原案 ...海道 遠(YUB)
校正・脚本・演出 ...真先裕
リライト・挿絵 ...まもと鶴
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「ツヤが命」
自分の許から奏姫が去ったことを何か勘違いしているアロタイ様。

いや…そうでもない?(笑)
とりあえず、草原であんな髪の毛してたらアロタイさんのキューティクルはボロボロでしょうなあ。