(六)星宿海
「次に会うときは戦場か」
「さあ、どうかな」
アロタイは出立準備の整った龍頭賊を見回した。
「お前らが這々の体を装って北平に戻り、使者が殺されたと永楽帝に告げれば...何万という軍がこちらに向けられるのであろう」
「おそらくは」
「もう一度訊く。ここに残って明軍と戦う気はないのか」
「ない」
臥龍は馬の背に乗りながら答えた。
「...不思議な男だな!」
アロタイは臥龍の馬の首筋を軽く叩いて後退した。
「明の莫大な情報を我々に流し、人質まで与えながらも共に戦う訳でもない。...建文帝の臣下ならば永楽帝が憎くはないのか?お前の敵とは一体...」
「お前には」
臥龍は、するどい眼をアロタイへ向けてきっぱりと言った。
「関係ない」
アロタイの纏う蒙古服の、燃えるような緋色がその瞳に映った。
「アロタイよ、お前とも靖難の変以来の長い付き合いであったな。しかし、今年が約束の十年目。あの折に匿ってもらった借りは返した。驪珠も取り戻した。もう我々の間には、何の貸し借りも無いはず」
「......」
「さらば!」
手綱をさばこうとする臥龍にアロタイの声が突き刺さった。
「待て!そのまま無事に帰れると思っているのか」
龍頭賊の男たちがにわかに殺気立った。その周囲を取り囲んだタタールの兵はアロタイの合図で弓を構えた。臥龍はゆっくり辺りを見回すと、大きく笑って言った。
「まったく...、お前の気まぐれには手を焼く。何が望みだ」
「望みは...」
アロタイの指が一団の隅に居た奏姫を貫いた。
「その娘が欲しい。おとなしく差し出せば他は帰してやろう」
男たちはざわめいた。桂靖は急いで奏姫の横に馬を寄せた。だが、姫に驚きの色は無かった。彼女は、目の前で対峙する二人の男に、ただぼんやりと視線を投げているだけだった。
「ならぬ!」
臥龍の口調は、いきなり強さを増した。その激しさは、宙をさまよっていた奏姫の心をうつつに戻すのに十分だった。

(イラスト・まもと鶴)
刹那、奏姫の脳裏には、あの日、彼の手元できらきらとゆらめいていた夜光杯の光がよぎった。
「やはりな。お前の大切な娘...という訳か」
奏姫は、胸が高鳴っていくのを抑えることができずにいた。
「...そうだ」
臥龍はアロタイを真っすぐに見据たまま、短く、しかしはっきりと答えた。
臥龍さま...!?
奏姫は心の中で、自分をとらえて離さない、ある疑問を繰り返していた。
私は、彼の配下の者でもなければ捕虜でもない。まして、妻や愛人というわけで
もない。
彼にとって、一体、自分は何なのかー
その答えが見つかりそうな予感がした。
「臥...!」
声に出して彼を呼ぼうとするのを、臥龍の言葉が遮った。
「このお方は、理由(わけ)あってお世話申し上げているが、倭国の王の孫姫である。わしが勝手にタタールに引き渡す訳にはいかぬ!」
その瞬間、奏姫の中のすべての時間が止まった。
周りの音も人の声も聞こえない。ただ、風の音が遠くから自分を包みこんでいる。奏姫は、広い広い草原に、ぽつんとひとりぼっちで立ち尽くしているような錯覚を覚えた。
「では...」
奏姫の心は止まったまま、言葉だけが口をついて出た。
「では、臥龍さまがこの身を勝手に明へ連れ帰ることも出来ぬはず!」
「なにっ!?」
思いがけない言葉に、臥龍は奏姫のほうを振り向いた。姫は一同の見守る中、ゆっくりと馬をおりてアロタイのもとへ歩み寄った。
「将帥。私が残れば皆をお帰しくださいますね」
=====<中天@編集部作品>=====
原作・監督・総指揮・キャラクター原案 ...海道 遠(YUB)
校正・脚本・演出 ...真先裕
リライト・挿絵 ...まもと鶴
☆別窓「カテゴリー」をクリックしていただくと、連載作品が第一回から「お知らせ」等を飛ばしてじっくりお読みいただけます♪
足跡帳へはここをクリック♪ 〜裏実況バージョン〜 BY真先裕&まもと鶴
臥龍の心・・・青
アロタイの心・・・赤
奏姫の心・・・オレンジ=====
「次に会うときは戦場か」
「さあ、どうかな」
ア(相変わらず愛想ワリイ奴だな・・・)
アロタイは出立準備の整った龍頭賊を見回した。
ア(さ〜ってと♪昨日の彼女は居るかな〜?おっと、いきなり切り出したらバカにされるかもな、ここは奴にナメられないように・・・)「お前らが這々の体を装って北平に戻り、使者が殺されたと永楽帝に告げれば…何万という軍がこちらに向けられるのであろう」
臥(おっと、さぐりを入れ始めたな)「おそらくは」
臥(わかりきったことだろーが!)ア(おい、他に喋れんのか?)「もう一度訊く。ここに残って明軍と戦う気はないのか」
臥(くどい!)「ない」
ア(ぐわあああ〜!会話ってのはキャッチボールだって、知ってるか?怒)臥龍は馬の背に乗りながら答えた。
ア(いや、ここはクールに・・・クールだぞ俺)「…不思議な男だな!」
アロタイは臥龍の馬の首筋を軽く叩いて後退した。
臥(・・・あほか。無視。)「明の莫大な情報を我々に流し、人質まで与えながらも共に戦う訳でもない。…建文帝の臣下ならば永楽帝が憎くはないのか?お前の敵とは一体…」
ア(今度こそ、何かちゃんと答えないわけにはいくまい、ニヤリ。)「お前には」
ア(ドキドキ)臥龍は、するどい眼をアロタイへ向けてきっぱりと言った。
「関係ない」
臥(関係ねーだろっ!アッカンベーだ!)ア(だあああああああ〜っ!!涙)アロタイの纏う蒙古服の、燃えるような緋色がその瞳に映った。
臥(いま、私の目には炎がうつっているかもな。)
ア(ひ、瞳が・・・燃えている!?)「アロタイよ、お前とも靖難の変以来の長い付き合いであったな。しかし、今年が約束の十年目。あの折に匿ってもらった借りは返した。驪珠も取り戻した。もう我々の間には、何の貸し借りも無いはず」
「……」
「さらば!」
ア(くううう〜!!しかし、このままでは済まさん)手綱をさばこうとする臥龍にアロタイの声が突き刺さった。

「待て!そのまま無事に帰れると思っているのか」
龍頭賊の男たちがにわかに殺気立った。その周囲を取り囲んだタタールの兵はアロタイの合図で弓を構えた。臥龍はゆっくり辺りを見回すと、大きく笑って言った。
臥(ウッザイナー、なんだよー)「まったく…、お前の気まぐれには手を焼く。何が望みだ」
「望みは…」
ア(今俺注目されてる?視線が快感〜)アロタイの指が一団の隅に居た奏姫を貫いた。
「その娘が欲しい。おとなしく差し出せば他は帰してやろう」
ア(ホラホラ、本当は最初っからこれが言いたかったんだよ、驚けわめけ)男たちはざわめいた。桂靖は急いで奏姫の横に馬を寄せた。だが、姫に驚きの色は無かった。彼女は、目の前で対峙する二人の男に、ただぼんやりと視線を投げているだけだった。
「ならぬ!」
臥龍の口調は、いきなり強さを増した。その激しさは、宙をさまよっていた奏姫の心をうつつに戻すのに十分だった。
奏(なんか面倒な話がはじまったようね。)刹那、奏姫の脳裏には、あの日、彼の手元できらきらとゆらめいていた夜光杯の光がよぎった。
「やはりな。お前の大切な娘...という訳か」
奏(なんですって!)奏姫は、胸が高鳴っていくのを抑えることができずにいた。
「...そうだ」
奏(えー!早く言ってよー!!!)臥龍はアロタイを真っすぐに見据たまま、短く、しかしはっきりと答えた。
臥龍さま…!?

奏姫は心の中で、自分をとらえて離さない、ある疑問を繰り返していた。
私は、彼の配下の者でもなければ捕虜でもない。まして、妻や愛人というわけでもない。
彼にとって、一体、自分は何なのかー
その答えが見つかりそうな予感がした。
「臥…!」
声に出して彼を呼ぼうとするのを、臥龍の言葉が遮った。
「このお方は、理由(わけ)あってお世話申し上げているが、倭国の王の孫姫である。わしが勝手にタタールに引き渡す訳にはいかぬ!」
奏(がーん!)
その瞬間、奏姫の中のすべての時間が止まった。
周りの音も人の声も聞こえない。ただ、風の音が遠くから自分を包みこんでいる。奏姫は、広い広い草原に、ぽつんとひとりぼっちで立ち尽くしているような錯覚を覚えた。

☆注・この実況はあくまでも「パロディ」です。