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浪漫@kaido kanata

. 月の娘、眉美と桂 第一章

            <あらすじ>

 大正中期。写真家、大津路の娘、桂と眉美は異母姉妹。
 長女の桂は父のモデルを努め、絶賛されていた。
一方、妹の眉美は写真の色着けという地味な手伝いをし、姉の過干渉に苦しんでいた。
 姉もまた、妹を可愛がりながら、父の後妻の娘を支配してしまうという、
お互いに葛藤をもっていた。
 ある日、妹の眉美が帰宅する際、玄関で男の肩にぶつかる。

          < 第 一 章 >

 銀色の雲の上を ひそやかにすべっていく満月。
 その恐ろしいほどの煌々とした光は、狂気さえ持っていそうだ。
 ルナティックパワーという言葉もある。

雲間の銀色の月



 そんなことを考えながら夜道の家路を急いでいた眉美は、
やっと自宅の玄関を住宅街の生垣の向こうに見つけた。
 月の光が 世の中すべての物音を飲み込んだような静寂だ。
 満月のようにまん丸な黄色い家の門灯、ふたつも月に負けてしまい、ぼやけて見える。
門灯の下には「写真師、大津路」と筆で書かれた木の看板。
 門灯を目の前にした時、急に眉美の胸が高鳴りだした。
今夜は勝負ともいえる計画実行の夜なのだ。
 手首の小さな腕時計を見た。まだのはずだが。

 黒い鉄の門扉に手をかけると、ギギギと古めかしい軋んだ音。
「……失敬」
 いきなり、眉美の肩に、ぶつかってきた大柄な男。
 よろけた眉美の身体を支えるや、男はあっという間に、
その一言だけ残し月光で濡れたような住宅街を走り去った。
「だ、誰かしら」

【……失敬】

 響く低音の男らしい声だった。
 家には 写真家の父、大津路の関係者や弟子がよく出入りする。
その中のひとりだろうか。
 いや、短い言葉だったが、あんな耳に残る低音は聞いたことがない。
 鼓動がよけい響き、冷や汗が額を伝った。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
 迎えに出たばあや、ふみの顔が真っ青である。
「どうしたの、何かあったの」
「桂お嬢様が……、桂お嬢様が……」

眼をおさえた 大正美人

 姉に何があったというのか。
 不吉な予感を感じた眉美は庭石の上を飛び、
 エナメルのハイヒールを脱ぐのももどかしく、
 半分開け放たれた玄関から客間へ走りこんだ。



 そこには―――
 姉の桂が羽根をむしられた蝶々のように、あでやかに
 恋紅色(こいくれないいろ)のたもとを乱して倒れていた。

 第二章に続く。

ダークグリーン ジャケ男うえ


     
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. 月の娘、眉美と桂 第二章

                  < 第 二 章 >

 らせんを描いた湯気がゆっくりと桂の頬をなぶっていき、
やっと落ち着きを取り戻したようだ。
お気に入りのロッキングチェアに身を沈めている。
結い上げられた髪が首筋に乱れ落ち、白いうなじが際立って見える。痛々しい。
 ……とはいえ、何が起こったのか察しはつくが、聞き出し辛い。

英語アフタヌーンティー手描き紅花マグコーヒーカップハイグレードセラミックティーセット

ロッキングチェアの家屋


「まゆちゃん、もう一杯、いただける?」
 真っ白な姉の唇が言った。
 眉美がもう一杯、紅茶をカップにそそぐと、ほうっと大きく息を吐いた。
 しかし、妹と視線を合わそうとはしない。
「思い出したの。白光さんとか言ったわ」
 自分の分も紅茶を淹れながら、何気なしに眉美が切り出してみる。
「え?」
「さっき、うちに見えられた方よ。お父様の作品がお好きだとかで前にも見えられたわ。
おとなしそうな眼鏡の紳士」
「白光(しらみつ)……」
 桂はゆっくり胸の内に刻み込むように、繰り返した。
 着物の裾を乱した、先ほどの倒れ方からして何が起こったのかは……。
「お話したこともないのに、いきなり」
 姉の持つ紅茶のカップが、カチャカチャと音を立てた。

修二 第一 メガネ

「姉さん、もうお寝みになった方がいいわ。紅茶より温かいミルクを用意しましょう」
 姉の部屋の扉を背中でバタンと閉め、眉美は自分も震えていることに気がついた。
(白光という男、まさか、こんなことをしでかす度胸があったなんて。
身なりのきちんとした人、育ちも良さそうなのに)
(「……失敬」と言った時は、もしかすると少し動揺されていたかもしれないけど。
だからぶつかったんだわ)
 ともあれ、今夜は父が留守である。
 ばあやのふみの口さえ封じておけば、弟子たちもいない静かな夜だ。


 だからこそ、今夜に、という計画だったのだが。
 深くため息をつく眉美である。

リボンの大正美人


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. 月の娘、眉美と桂 第三章 前半

        < 第 三 章 前半 >

 煙草の先の赤い点滅で 男が門柱にもたれて立っているのが分かった。
 三月の末とはいえ、まだまだ刺すような寒気が足元から忍び寄る。
眉美は羽織っているショールを首元まで引き寄せながら、
小走りに男の待つ門柱へと走りよった。

太陽の懐中時計


 頭上には 銀色の満月が煌々と輝いている。道端に、
人影がくっきりするほどのまばゆい月の光だ。
何もかも知っているぞ、と言わんばかりに青白く。
「どうしたんだ、今夜、決行じゃなかったのか」


 天城永渡(あまぎながと)は、いかにも不機嫌だった。
 だらしなく乱れた髪の毛やネクタイ、それでいて獣のような視線と厚い唇。
多くの女がこの男くさい風貌に翻弄されてきたんだろう。
 人の裏側を嗅ぎまわる、ジャーナリストなのだ。写真師の大津路ともつきあいが長い。
もっとも、芸術面の雑誌の仕事上だけだが。
 自然と、眉美姉妹とも顔見知りになった。もっとも三人で談笑することはない。
桂だけがひっそりとふたりを遠くから見ているのが常だった。
 眉美に、「嫁入り前の娘が妙齢の男性と、あまり親しくしない方がいいわ」の
忠告も忘れなかった。



「ちょっと、番狂わせが起こったのよ」
「番狂わせ?」
「せっかく時間を作ってもらったけど、あなたの出番が無くなったの」
「出番が無くなった?」
 永渡は煙草を口から外して、斜めから眉美を見た。
「白光って男、知らない?三十歳前後、銀ぶち眼鏡をかけた白皙。
まるで……そう、鋭い月光のように刺すような視線」
 確かに、肩がぶつかった一瞬、眼鏡の奥から銀色の視線を感じた。

赤い浴衣で読書


「白光?はてな?で、その男がどうかしたのか」
「先を越されたの。今夜のあなたの役目を横取りされたの」
「役目を横取りって……」
瞳に険しさが宿った。

第 三 章 後半に続く。

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. 月の娘、眉美と桂 第三章 後半

       
         < 第 三 章  後半 >


「そう。姉さんがその男に凌辱されてしまったの」
「……!」
永渡にもこれは衝撃だったようだ。
「獲物をさらわれた?まるでハイエナみたいな奴だな。白光?」
思い出せないようだ。
「ま、調べておこう」


 平静を装って返事する永渡のプライドがズタズタになったことを眉美は感じ取っている。
何せ、長いつきあいだ。十年近くになるか。
眉美がまだセーラー服を着ていた頃からの。
 煙草を足元に落とし、くたびれた靴で踏みにじってから眉美の尖ったアゴをつかみ、
少々、手荒に揺さぶった。
「クチナシのような純白なお嬢様の仮面をつけて、

『お姉さまを犯して。めちゃくちゃにしてしまって』とは

恐ろしい計画を企む娘だな、眉美」
「ふふふっ……」眉美はアゴを捕らえられたまま、含み笑いをし、
「こんな女だから、長年、側に置いておくんでしょう」
「確かに退屈な女ではないな」

眉美 永渡 べえぜ




 女の顔にかぶさるように真っ赤なルージュに、情熱のかたまりのベーゼを与えた。。
「だめ、これ以上は。火がつきそう、あなたの接吻ったら」
 永渡の厚い胸を強く押しやり、後じさりする。
「君の姉さんも惜しいことをしたな。俺の接吻を味わえなかったとは」
「じゃ、白光って男のこと、調べておいてね」
 断髪にしたまっすぐな髪をぽんと揺らせて、邸宅に戻る。
 満月の光が辺りに降り注いでいる。
「計画、失敗、か……お月さまよ、あんたは何もかもお見通しなんだろう」
 ライターをカチリと鳴らすや、永渡はきびすを返して歩き始めた。


第四章に続く。


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. 月の娘、眉美と桂 第四章 前半

                  < 第 四 章 前半 >


 「ふふん、いい気味」
眉美のぽってりとした赤い唇の端が持ち上がる。
春の長雨を窓から眺めている。まだ若葉も出ない木々は冷たい雨に濡れているばかりだ。
姉を凌辱するのは、永渡でも、白光でも、誰でもよかったのだ。
あの夜以来、家事はばあやに任せきりで姉は自分の部屋から出てこない。

雨に濡れる若いもみじ


(きっと姉さんは、この雨の音におびえて布団をかぶって震えているにちがいないわ)
(父さんが美しく撮影して皆から称賛され――― ちょっといい気になっていたわね、姉さん)
 口元が残酷にゆがむ。
(あなたよりきれいでない私が、どんな気持ちで父さんの手伝いをしてきたか、わかる?
私の積もり積もった口惜しさを思い知るがいいわ)
(いつもいつも、私の行動を見張り、鉄条網を作ってきた姉さん――)

素足ぶらぶら



 休憩用の簡易いすに座って、父の写真すたじおの隅っこで、足をぶらつかせている眉美である。
カビのにおいさえする古びた洋館。
だだっぴろいすたじおには かび臭さと雨の音が占領しているだけで、彼女以外、誰もいない。
 撮影すたじおの横に、狭い作品展示スペースがあり、眉美は 
切りそろえられた前髪の下から、そのスペースを睨みつける。

 姉、桂の写真の数々が飾られている。
 三歳くらいの、お人形のようなフリルとレースに埋もれた桂。
 七歳くらいの純白のワンピースに真っ赤なハンドバッグをおしゃまに腕にぶら下げた桂。
 十二歳くらいのセーラー服姿の桂。
 十五歳くらいのはかま姿の、女学校入学式の凛々しい桂。
 部屋で編み物を熱心にしているところ、かまどで大きな鍋をかき混ぜているエプロン姿、
ピアノの鍵盤を食い入るように見つめている桂の横顔。


 それらには父の弟子として、すべて、モノクロ写真に絵筆で色つけした記憶がはっきり残っている。
 父の溢れんばかりの桂への愛情、それに比べ、ちっとも関心がないといっても
過言ではないほどの眉美への父の素っ気ない態度。
 実の娘への愛情など感じられず、ただの弟子としての厳しい指導だけしか眉美は知らない。
「さあ、姉さん、もう一度このすたじおに戻ってこれるかしらねえ」

七五三 願い事をする少女


後半に続く。

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. 月の娘、眉美と桂 第四章 後半

                 < 第 四 章 後半 >

 台所では、ばあやがひとり途方に暮れていた。
 眉美が何かつまむものはないか、さぐりに来る。
「お腹が空いちゃって」
「眉美お嬢さま、のんきでいらっしゃいますねえ。
桂お嬢さまがこんなことになり、ふみは、生きた心地もいたしませんよ。
何にも召し上がられならないというのに」
 本気でおろおろしているばあやである。
あるじがこの事を知ったら、お宿下がりは間違いないだろう。

「姉さん、具合まで悪くなったの?少し見てこようかしら」
 二階へのこげ茶の階段を軋ませて眉美が昇りはじめた。

大正時代 矢羽のonnna



 少し開いていた扉からそっと覗くと、薄暗い部屋の中、
小さい鏡台の脇の寝台に姉が寝ている。
 ふと、椅子の背に無造作にかけられた姉の白い色のショールが眼にとまる。
 細かい水滴がついている。
(雨のしずく?どこか外へ行ったわけでもないのに)
 気がつくと、床に敷かれた絨毯も、ところどころ湿気っている。


 その時である。扉の隙間から、痩せた男の影が廊下を通り過ぎたのを目撃したのは。
眉美の耳から激しい雨音が消えた。と、同時に雨に触発されたかのように、
馴染みの匂いが鼻先に残った。じゃ香の香りである。

着流しの男




「い、今のは」
 ばあやの声が聞こえてきた。
「旦那さまのお帰りでございますよ」

第五章に続く。

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. 月の娘、眉美と桂 第五章 

                < 第 五 章 >  
 父が戻ってきた。
 どこへやら気ままに撮影旅行へ行っていたのである。
 キチンと結んでいたあずき色の蝶ネクタイを外すやいなや、
グレンチェックの上着をばあやのふみに投げつけ、
「桂が寝込んでいるだと?」
 白いものの混じった太い眉が険しく寄せられた。
 すぐに長女の部屋へ向かおうとする。
 ふみが慌てて、
「ただのお風邪のようでございます。そっとしておいて差し上げてくださいませ」

タイをさわる しろひげの紳士



 廊下の角から様子をうかがっていた眉美の心に、
沼の底の古い藻のように溜まった姉への嫉妬がゆるりと溶け出す。
(まさか、見ず知らずの男に貞操を奪われた、なんて言えないわよね)
 ばあやとの秘密になっている。父親がもし知れば、衝撃で気を喪うかもしれない。
それに……先ほど、姉の部屋から立ち去った男の気配。
 ぶんぶんと頭を振って記憶を消そうとした。
「何かの見間違いよ」
 あんな下劣な計画を立てながら、どこか心の一部で、桂は「女」ではなく
「母代わりの姉」でいてほしい、などと思う眉美である。


 その夜、桂が何日かぶりで食堂へ姿を現した。
 あの夜以来、粥くらいしか胃に入れていなかったが、父が戻ってきたとあっては、
勘ぐられないために無理をしてダイニングの席に着こうとしたのだろう。
 ほんの数日ぶりなのに、桂の頬は痩せこけているように見える。
「孔雀青」の着物のせいかもしれない。鮮やかな孔雀の羽根のような色に、
無理して薬指で伸ばしたであろう紅がよく映えている。しかし、表情の翳りは隠せない。

灯のともった食卓



 父親がナプキンを外して席を立ち、娘の横に来て顔色を観察する。
「桂、まだ気分がすぐれないのかね。もっと精のつくものを、ばあやに用意させようか。
これでは、私の輝く月がすっかり曇ってしまったようじゃないか」
「いいえ、ご心配には及びませんわ、お父様。じきに良くなりますわ」
 テーブルをはさんで姉をうかがう眉美の瞳は獣のように輝いている。


(お父様の心の中には、まだ姉さんの母親が生きている。
私の母親の存在はどこへ行ってしまったのか……)
 「とりあえず」
 眉美の血のような朱唇の端が鋭く持ち上がった。
(このままでは、写真のモデルは無理ね)
 依頼した人物は違ってしまったが、結果は眉美の思惑とおりだった。

モノクロ 腰かけるレトロ美女


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. 月の娘、眉美と桂 第六章

★今までのあらすじ。

 眉美は 異母姉の桂との確執に悩んでいた。
 あろうことか、彼女を穢すよう、無頼漢の 永渡に依頼するが、
 姉の写真の 異常ともいえる執着を持った、白光という男に
 役目を横取りされてしまう。

月を抱く少女


     
         < 第 六 章 >

 眉美の少女時代は、今もそうだが、何から何まで桂の言いなりだった。
洋服、着物、お稽古事、女学校、読む本、友人、すべて。

「私は眉ちゃんのためを思って」
「眉ちゃんが一番、大事」
「眉ちゃんは姉さんの宝物」

かがみ


 事あるごとに、姉から聞かされる呪文。
 これらは愛の言葉ではなく、妹を服従させるため、
自由を奪うための言葉である。
 眉美は 姉が自分を憎しみぬいていることなど、お見通しだ。
 骨身に沁みている。
 桂は眉美の母親である、父の後妻が憎いのだ。
 自分の母親を妻の座から追いやった女―――。

 すでに母も後妻もこの世の人ではない。
 しかし、桂の憎しみのしこりだけが残ってしまった。
それゆえの妹への支配である。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 眉美の心は ついに悲鳴を上げ始めた。
「助けて、姉さんの手から私を自由にして」
 そう叫べる相手は、たまたま身近にいた永渡だけだった。
 まだ、セーラー服のスカーフをなびかせていた頃、
父の仕事仲間のジャーナリスト、
無頼漢の永渡の下宿へ走りこんだ。


「私を姉さんより先に女にして」
「後でやっかいなことは言いっこなしだぞ」
「わかってるわよ。責任とって、なんて言わない」
 永渡は眉美を受け入れた。その頃だろうか。
彼女が 女学生らしいおさげ髪をぶっつりと、
モガ風に切ってしまったのは。

青いネクタイなし



モガ 着物

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. 月の娘、眉美と桂 第七章

         < 第 七 章 >
 写真はモノクロである。
 もちろん天然色(カラー)ではない。
モノクロで撮影したものを水彩絵の具で着色していく。
父の厳しい指導でひととおりを学び、眉美はこの着色を受け持った。
 命を吹き込むような作業はやり甲斐を覚えた。
特に、爽快感まで感じたのは、姉の写真である。
 反発しているはずの姉だが、うりざね顔の、女から見てもうっとりする美形なのだ。

モノクロ 竹の椅子に座る 大正女性
赤い浴衣で 座る少女

絵具とパレット



 まるで日本画の美人だ。
 着色することに、心が躍った。モノクロの彼女に命の息吹を吹き込む。楽しい作業だ。
父に着色の出来を見せて、うなずいてもらうと、大きな達成感を得た。
 父の撮影した作品に自分が命を与え、モノクロの姉を生き生きとさせる。
 姉はよりいっそう美しくなる。


モノクロ 少女に化粧してあげる


 姉に反抗したり、嫌悪感を感じたりしながらも、この美しい人が姉だと思うと
誇らしく思う眉美である。
自分は満月のように輝かんばかりに美しい姉と比べて、
色黒で女らしくない頬骨の高いごつごつとした顔立ちは 父親に似たのだろう。



 劣等感、いや、それ以上の憎悪が離れようとて離れないのはわかっている。
 しかし、同時に姉を誇らしく思う。


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. 月の娘、眉美と桂 第八章

                < 第 八 章 >


 “あの夜”から一週間も過ぎただろうか。
 永渡から電話があった。
屋敷のガラス張りの電話室で置いてあった受話器を持ち上げると、
「判ったぞ、あの男の身元」永渡はやや興奮していた。


「桂さんの写真を盗み出そうとしてブタ箱に放り込まれたことがある、白光陽一」
 思いがけない永渡の言葉である。
「そんなことまで!……で、今度は写真だけでなく本物の姉さんを」
 眉美の目が見開かれた。
 姉の異常な愛好家といえばいいのか、写真だけでなく姉に執着する者の仕業。
 男のずうずうしさが腹立たしい。
そして同時に自分の着色があの男の心に響いた誇らしさ!
姉に対して「そら、ごらんなさい、いい気になってるから」と言ってやりたい気持ちとが、
ごちゃまぜになった女の醜い感情だった。

すだれごしのレトロ美女



とたんに眉美は受話器を放り出し、玄関へ駆けつけた。
「もしもしっ、どうした眉美、どうしたんだっ」
放り出され、ぶら下がった受話器から永渡の声が騒いでいる。

壁掛け レトロ電話


 玄関の大理石の床の上では、父の前に上がり框(かまち)に土下座した青年がいた。
あの白光がガマのように両手をついている。
「先生……、まことに唐突ではありますが、先生に弟子入りさせてください」
 絶叫するような声に、父も眉美もばあやも、そして桂も呆然としていた。
「写真に関しては、まったくの素人です。カメラを触ったこともありません」
 簡素なテーブルと椅子だけの部屋で、白光はもう一度、頭を下げた。


眼鏡の幾何学模様の男



「しかし、どうあっても、先生の弟子にしていただきたく」
銀ぶちメガネの前髪から 汗がしたたり落ちている。
駆けつけた永渡も呆れて口がふさがらない。


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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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