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浪漫@kaido kanata

. 2012年 WHITEDAY 短編 「キスで チョコを 私から」 1

 今年もこの日が やってきた。 バレンタインデー。


 いい加減、この習慣も無くなればいいと思いながら、美流は 毎年 まんざらでもない。
 日本では 普通、女性が男性にチョコを贈る日だが、彼女には、欧米なみに
逆チョコが殺到するのだ。
 今年も大学の仲間や 高校時代の同級生や、父の会社の社員から チョコが たくさん贈られた。
 どれも ブランド物のアクセサリーや バッグ付きである。
 美流は オーナーの財閥令嬢。

みれ 1




 恵まれた容貌、明るく、そこそこ小さい時から 成績も良く、モテない方が不思議なくらいだ。
 でも、いくら チョコが山と積まれても、本命から もらわないことには、まったく嬉しくない。
 勇気を出して、健気にも手作りチョコを苦労して、家のねえやに教えてもらい、奮闘して作った歪んだチョコを センパイに渡してみたが、
「世間の ありふれた行事には 興味がない」 と、あっさり断られた。
 しかも、本命は 人格的にも信頼できる大人の上、将来 有望株。それに 美形ときている。



yamamoto 1

 健気にも、その大学のセンパイの本命に、受け取ってもらえなかった、では、気分、サイアク。落ち込みまくり、凹みまくりの 美流なのだ。
 そんな中、父親の会社のレセプションに出席していた時、廊下で 白い調理服を着た若い男が、5センチ四方の ブルーの飾り気のない箱を渡しに来た。
 美流には 初対面の男だったので、ストーカーなのか!? と 驚いたが、どう見ても服装も 容貌も態度も真面目。
「どうして 私に?」
「ここのホテルの製菓部門のパティシエ見習いです。高嶺の花と知ってますが、時々、会場で見かける貴女から 目が離せませんでした。イヤでしたら、捨ててくださって結構です」


ananより 春馬 2

 これだけ 言うのが やっとだと分かった。鼓動の音まで聞こえてきそうだった。純真なのだろう。
 青年は 恥ずかしそうに踵を返して 立ち去った。
 「洸(こう)」と名乗った。
 何もプレゼントなど 添えておられなく、小さなチョコの小箱、それだけだった。
「なによ、私を誰だと思ってんの!!」
 失恋のショックも手伝ったことは 間違いないが、歩道から見下ろした場所にあった 小さな池に投げ捨てた。

 いったん、自宅に戻った。
 使用人たちも、お嬢様のご機嫌の悪さを察して、ビクビクしている。
 夜になって、部屋に山積みされている チョコとブランド物を眺めて 虚しくなった。部屋着のまま ベッドに寝転んでいたが、ため息がとまらない。

チョコ山

 今夜も 冷え込んでいる。窓を開けると粉雪が舞っているではないか。寒いはずだ。
 なんだか、池に捨てた チョコが 可哀想になってきた。
 このままだと 眠れないくらいになってきたので、厚着して、懐中電灯だけを持ち、昼間の場所へ行ってみた。

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. 2012年 WHITEDAY記念短編 「キスでチョコを私から」2

 遠くに街灯があるだけ、住宅街も遠い。池の面が白くのっぺり と光っているだけ。
 周りには 芦が背高く密生して、枯れて柴になっては いるが、どの辺に捨てたか 判らない。
黒池 


「何、してるんですか!!危ないですよ。どのくらいの深さか判らないのに!!」
 飛び上がるほど ドッキリした。素足になって池に踏み込みかけた瞬間である。声の主は洸だった。
「さっき、こんな夜中に 交差点で見かけたので、心配になって」
「ごめんなさい」正直に言うわ」美流はうなだれた。「昼間、あなたから もらったチョコをこの池に投げちゃったの」

黒ハルマ 4




「えっ。。。」
「ごめんなさい。実は 私、失恋しちゃったの。それで ヤケになって……」
 青年が ガードレールを飛び越えて、池の畔まで降りてきた。
そして 美流のウデを引っ張って、戻し、自分は スニーカーを脱ぎ、ジーンズを膝までまくり上げた。
「どの辺?」
 池を睨みつける。
 美流は 懐中電灯を 渡しながら、
「確か、遠くには 投げてないから、畔にあるはずだと思うんだけど……。そうだ、近くに桜の樹が二本あったわ」
 洸は、桜の樹を見つけると、走りよって、くまなく光を当てた。



「あった!!」
 青い箱が 水際に落ちていた。幸い、濡れていない。
「良かった、ありがとう」美流は顔を輝かせて、もう一度、青年から チョコを受け取った。
「どうして 一度、捨てたものを、この夜更けに、寒いのに 拾う気になったの?」
「……チョコが可哀想になって……」
 美流は ボソッと言ったが、それだけでないことを、自分で感じていた。
 チョコが、というより、真心こめて作ってくれた青年の 心の方が可哀想、いや、心打たれたのだ。


少し 呆れた様子の 洸だったが、
「とにかく このままじゃ 風邪ひいちまう」どこか暖かいところへ――――、つったって、この辺は喫茶店も ファミレスもないし、Mも無い……」
 洸は思いきって言った。
「俺のアパート、ここから歩いて10分くらいだから 来ますか?」
 さすがの美流も面食らったが、もう人通りもない真夜中。タクシーを呼んでも 待っていてもムダだと分かっている。洋服は下半身ずぶ濡れ、どうしようもなかったのだ。仕方なく、青年の後をついていった。
 想像したより、ひどいアパートだった。モルタル、二階建て、廊下には、住民の洗濯機、日用品が溢れている。六畳ひと間の安アパート。美流には 入ってすぐに隣のある、洗面所にも見えない 台所といい、日焼けして色落ちした ケバ立った畳。すべて もの珍しかった。
 こんな建築物は、映画か何かでしか見たことがない。

アパ




 ただ、不潔感は どこにもない。部屋中、きれいに掃除、整理整頓が行き届いていて、嫌悪感は感じない。
 「汚いところですが、どうぞ、早く温まって」
 洸は言いながら、石油ストーブを点火した。古い品なので、何度もカチカチ言わせると、やっと 炎が上がった。薄暗い部屋が オレンジ色に染まり、ほっとひと心地つけるくらいになった。
 走りよって しゃがみこみ、暖をとった 美流も ガチガチと歯が鳴るほど、冷え切っていたが、ようやく温まってきた。
「濡れたものを着替えた方がいいよ」
 そう言った 洸の横顔もオレンジ色に染まり、とても 心の優しそうな青年だなあ、と 美流は 見惚れた。
「いや。その、俺は 廊下に出ているから。汚いスエットでよければ、これ、着てください」
 渡されたのは、長年 着古した 紺のジャージだった。

ジャージワンコ 3




 洸が出ていってから、花柄のワンピを脱ごうとして、ポトリと畳の上に落ちたのは、池まで探しにいったチョコの小箱だった。開けてみると、ストーブの熱で溶けていた。
 それでも、ちょっぴり ベロで舐めると、口の中、いっぱいに 今までにない コクの味わいが広がった。
「ごめんなさい……」
 美流は ジャージに着替えてから、青年を呼び、チョコのことを謝った。
 洸は、チョコより、自分のジャージを着て だぶだぶ姿の 美流を 見てやや微笑んでから、
「かまわないよ。こんなので 良かったら、いくらでも また 作る。受け取ってくれるのなら」
「もちろんです!!池に探しに行ったんですよ。でも、いいんです」
「え?どうして?」

    みれ 5




(だって、あなたの心を受け取りましたから ……)
 とは、いざとなると 美流は 照れくさくて言えずに、黙っていた。


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. 2012年WHITEDAY記念短編 「キスでチョコを私から」3

そうこうしているうちに、どこかで一番鶏が 啼き始めた。
 美流は 丁寧にお礼を言って、夜明けの薄紫の街へ出た。身体が貫かれるような冷え込みだ。
「待って」
 背後から 洸が自転車で追いかけてきた。
「お嬢様が そんなかっこうで歩いていると、体裁悪いだろ」
 美流は ムッとして、

「その、お嬢様っていう 呼び方、私、キライ」
「だって、そうじゃないか」
「でも、なんだか、バカにされてるみたいだわ。ちやほやされて、何もひとりじゃ出来ないだろうって、言われてるみたい」

びんた



いきなり 青年の手のひらが頬に飛んできて ピシリと鳴った。
 一瞬、美流は 何が起こったのか、わからずに きょとんとした。産まれてから ずっと、頬を殴られたのは、初めてだ。

くろ 1


「その通り、ぬくぬくと育って、何もできないだろう!あんたは、自分がどんなに恵まれているか、自分で分かってないんだ!!」
「そ、そんなこと、言われなくたって、わかってるわよ」美流の大きな瞳から 大粒の涙が流れた。
「でも、ぶつことないでしょ!!あなたこそ、ビンボー人のヒガミよ!!」
 それだけ 叫んで、下り坂を走っていった。
 街は、暁の色が増し、そろそろ、朝の太陽が姿を現しそうだ。


夜明け 4



~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  みれ 6




 何日か経ったが、美流の心は 後悔と自己嫌悪で 張り裂けそうになっていた。大学へ行くのも 億劫だった。チョコを渡しに来た男子学生たちが 反応をうかがいに 群がりよってくるが、すべてうっとおしかった。
 自分でもワガママだと 気づいているが、学生たちも 当然、遊びだということは、百も承知だ。どうして 今まであんな軽々しい男ばかりにちやほやされて いい気になっていたのか。

 チョコを断った、本命の男の方がよほど 真面目だったし、この前に安アパートの洸だって そうだ。


やまもとくん 1


 振られた男のことは、不思議なくらい すっぱり忘れられたが、洸のビンタは 強烈だった。
 あれで目が覚めた気がする。



 美流は、ある日 思いきって両親に家を出て自活することを告げた。
「パパ、ママ。お願いします」
「お前、いきなり そんなこと……!!」

二谷 5

白川さん



両親共に、反対した。ひとり娘を家から出すなどと、考えたこともない。
「大丈夫よ。住むところも決めたし、バイト先も探して見つかった。大学はしばらく休学するわ」
 ひとり暮らしするのは、洸の住んでいたような 昭和時代の建築物だ。
「大学は いいの。どうせ 花嫁学校みたいな お飾りの三流大学だし」
 しかし、両親は、断固として反対したが、美流は三ヶ月ほどかけて 説き伏せた。


 何が美流をこんなに奮い立たせたんだろう。
 自分で わかっていた。あの夜の洸のビンタだ。
 ひとり暮らしを始め、バイトのベーカリー屋さんにも、慣れてくると、小さなお菓子教室へ通い始めた。
 そして、季節は過ぎていった。

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. 2012年 WHITEDAY記念短編「キスでチョコを私から」4

 また、次の年の バレンタインがやってきた。


 洸は 勤め先のホテルで 見かける 美流の父親の秘書に近づき、思いきって尋ねてみた。
「お嬢さんは、最近、見かけませんが、どうなさっているのでしょう。あ、ボク、怪しい者じゃないです」
 父親が気づいて振り向いた。
「もしかして 洸くんじゃないかね?」


 恰幅の良い、紳士にいきなり尋ねられて、洸は 慌てた。
「ど、どうして ボクのことを??」
「娘がメールではなく、手紙を送ってきた。ひとり暮らしを始めたいきさつをね。君がワガママ娘の目を覚まさせてくれたようだな」
「ひとり暮らし!?」
「ああ、一年前から 大学も休学してな。私からも礼を言うぞ、洸くん。娘は君のおかげで成長した。外の風に当たることが出来た」
 ぼん、と 両肩に大きなごつい手のひらを置かれた。

「で、彼女は 今、どこに?」
「それは 言えんよ。君には告げるな、と 手紙に書いてあった」
 いてもたっても いられなくなった洸である。相変わらず、パティシエ修行の日が続いている。


ホテル 1




 製菓教室の修行は 生易しいものではない。
 洸は 実は スイーツなど、大嫌いだが、三年前に 交通事故で失った彼女が、大好きだったのだ。
突然の高速玉突き事故、殆ど 即死状態。彼女ひとりでハンドルを握っていた。



あおいちゃん 1



 そのうち、無理矢理、約束させられた 彼女のお気に入りのスィーツも、食べに行けずじまいだった。
 言い表せないほど、重くて大きい悔いが残った。
 彼女の供養をすませた後、その店へ食べに行き、このスィーツに負けないものを自分で作って 弔う気持ちになったのだ。そのために、理数系の大学も中退して、製菓専門学校へ入学しなおした。

 夢中で製菓を学び、ようやく彼女を喪った哀しみから 立ち直りかけた時、見かけたのが 美流だった。
 亡くなった彼女と 似ていたわけではない。亡き彼女の方が すでに立派な社会人で、OLとして働いていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 世間が騒ぎすぎる バレンタインも過ぎ、あっという間に3月14日のホワイトデーが近づいてきた。
 パティシエは 一年以上も前から 企画に取り掛かり、試作を繰り返して、売り出す商品を会議で決める。洸の勤めるホテルでは、パーティーや ラウンジでのオーダーにも 応じる。
 ホワイトチョコケーキが メインの品だ。 スタッフ一同、全力を尽くしてきた。

 Wケーキ 2

Kittyケーキ

(サービス)

  猫 ゆうわく




 そして、14日がやっと 過ぎ、洸たちも ひと息ついた。

 やっと、ラウンジの閉まる時間が来て、後始末の作業に入り、最後に 洸が残った時だった。
 深夜近く、真っ暗なホテルの周囲、街灯は灯っていても、寂しいものだ。
洸は背後に 気配を感じた。

みれい 正面



       純白の妖精―――!?


 その姿は ふわふわのフェイクファーの短い丈のジャケットコートと、下には オフホワイトのシルクのワンピ。腕には、ファーのボンボンのついた シュシュをはめている。結い上げた髪の毛にも。
「美流さん……」
 初めて、その名を呼んだ。
「私のこと、覚えてくれていたのね」
 にっこり 笑う彼女の顔は すっかり 一年前より 明るくなっていた。
「どうしていた……」
「これ、受け取ってくれる?」
美流が差し出したのは、小さなハコ。
「一ヶ月遅れのバレンタインだけど……。私が作ったの」
 洸は 急いで包みを開けた。そこには、女の子らしい チョコが入っていた。

ブタちょこ


    
 つまんで口に入れる。なんともいえず、甘くて、過去の哀しみを想いおこさせるような ほろ苦さも混じって、それが 蕩けた。
 洸が素直に 合格点をあげられる。

ありがとう はるま


「うまいよ」
「ありがとう!!」
「でも、今日のホワイトデー、何も用意してないけど……」
「いいの。もう一個、受け取ってもらえれば、それで」
 言うなり、いきなり 純白のファーの付いた袖が、首に巻きついたと 思うと、薄桃の唇を重ねてきて、洸の口の中に、もう ひとつ チョコを送りこんだ。

キス★


 再び、チョコの余韻と、しなやかなオフホワイトのコートのままの彼女の身体のしなやかさを味わった。
 粉雪がちらつき、夜の空気に早春の匂いが 立ち込めていた。

          
                               終わり。

<イメージ キャスト>

 洸 ―――――――― 三浦春馬
 美流―――――――― 桐谷美玲

 美流の元カレ―――― 山本耕史
 洸の元カノ ―――― 宮崎あおい

 美流の両親 ―――― 二谷英明、白川由美 


~~~~~~~~~~

★ ご愛読くださいました 読者さまに 感謝申し上げます。


と、普通は こういうHAPPYENDで めでたし、めでたし
なんですけど、ドSの作者としては、物足りないんですよね。

 ここから、実は 美流が 洸に食べさせたチョコには 洗脳能力が
 潜んでいて、自分をフッタ 元カレに 復讐させるとか !!

 父親の会社の跡継ぎに 美流が就任して、製菓業界を乗っ取るとか !!

 妄想が 勝手にボウソウする人間は これだから いけませんな。

 上記、本文のイメージを ぶっ壊すので、
 読まなかったことにしておいて くらはい (汗)

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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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