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浪漫@kaido kanata

. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにある」  1

 <序・翔馬のモノローグ>

 その本が 大型書店に平置きされた時、ふと、彼女の微笑む顔が脳裏をよぎった。
 ふだん、つぶらな アーモンド型の瞳が 笑うと、上の三日月みたいに優しくなる。
 フルートの演奏を終えた時の満足な表情だ。

「やっと 本に出来たよ。音色ちゃん……」

 そう言って、美しい青の装丁の本を持ち上げてみせたのもつかの間、
目に飛び込んできたのは、いつもの俺の部屋の薄汚れた ベージュのカーテン。

15年 夏 紺じゃけ さえない顔


原稿用紙とペン


(夢だったか……。あの本の出版は消えたんだった。
本にしたかったが、電子書籍だけで許してくれ)
 視線を移すと、本棚には 黒髪の長い、高校生くらいの少女が被る麦わら帽の彼女が笑っていた。
 昔のそのままの。


<イメージ>

 遠野翔馬 ――――――― 三浦春馬
 
 佐久間編集長 ――――― 小日向文世
 佐久間夫人、恵 ―――― 根本りつ子


 荒瀬礼司 ――――――― 井浦 新

 室井雄三郎 ―――――― 加藤 剛
 室井 優(すぐる) ―――― 松田翔太


 音葉音色(おとは ねいろ) ――― 石橋杏奈



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「宇宙の果ては、ここにあるよ」
 ある日、音色ちゃんは ポツンと言った。
「え、何だい、それ」
「ううん、何でもない。
でも、もし、私が遠くに行っても私のソウルは 翔馬くんのそばにいるからね」

「遠くへ行く?」
「例えば、の話よ。気にしないで」

杏奈 ひとこと



(この子は ポエムや小説書いているだけあって、時々、変わったことを口走るからなぁ)

 口元は 微笑みながら、少し哀しげな 瞳の色だった。

 そして、それが 俺の見た、最後の音色の姿だった。
 ソウルの入っている~~~。
 そのまま、音色は いつものフルート教室に向かった。

フルートの手元


 いつもと同じ黒髪、まっすぐのロングが 揺れて遠ざかっていった。

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. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにある」 2

                    一

15年 雑誌より 椅子の背から はるま



 俺は 亡き音色(ねいろ)の代わりに 絶筆になっていた小説の続きを書き始めた。
 今まで、まったく興味のなかった文学の世界だが、新進作家として、
売り出したばかりの彼女の絶筆になりそうだった、かなり、
自叙伝ぽい作品を完成させてやりたいと思った。
 絶筆するには 音色の死は 早すぎた。
 まだ 21歳―――。
 俺たちは 知り合ってやっと一年くらいだった。


 人の自叙伝を他人が書くなんて 他の人が聞けば、無理だというだろう。
 しかし、どうしても 書きたいという決意が しっかりと俺の奥底に芽生えていた。
 とにかく、分かりうるかぎりの彼女の生きてきた道、思い
、嬉しかったこと、苦しみを辿る必要があった。

杏奈 ものうげな 顔



 彼女は 苦しみから 自死の道を選んだ。
 好きだった男から さんざん、金をせびられていたらしい。
 それでも男はつきまとい、あげく、妻子の存在が発覚する。
 ここまでは おぼろげに判明している。

 しかし、俺は そんな陳腐で小汚い芸能スキャンダルみたいな
 話で終わらせるのはあまりにも イヤだった。

 それだけの理由で 彼女が命を断つはずはない。
 芯の強い娘だと 感じていた。
 深いつきあいが あったわけではないが、それは 確信を持てた。

ウサギのフルートとバイオリン


 彼女の奏でるフルートの音色が 聴けなくなった―――、
 それだけでも、心が破れそうだ。
 何がいったい、彼女をそこまで 追いつめたのか―――。


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. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにある」 3

                         二

 小説など、所詮、娯楽ものしか読んだことがない。

15年 8月 何かの 雑誌

 が、音色の今までの作風は明るく、青春ものばかりだ。
 実際、青春、まっただ中の17歳で 作家デビューしたのだから、自然なことだろう。

うさぎ かぶってる子 の 女子高生たち



 奇をてらった作品は ひとつもなく、等身大の高校生活の中で起こる小さな出来事を扱っていた。
 それが、同年代の読者を惹きつけたらしくて、読者は 多かったようだ。
 新刊が並ぶと飛ぶように売れ、電子版ダウンロード数も そこそこいっていた。

杏奈 さわやか 笑顔


 ところが 絶筆作品だけが ど―――ん、と 暗い。暗すぎる。
 別人が 書いたようだ。
 小説仕立てだが、自叙伝だ。
 問題の男とのどろ沼のような ストーリーだ。
 当然、ラストは 彼女の死で終わるはずだが、俺は ポジティブな方向に向けたかった。
 そして、やっと完成させた。

ドラえもん 編集部



 だが、それは 編集者に なかなか、うむ、と 言ってもらえない。
 突然の死を 明らかに 出来る作品なのだから、
ありのままの事情を 練りこんでほしい、と 言われた。
 いくつもの出版社を当たったが、ラストがこんなに明るいものでは面白くないということだ。
どうやら、暗いスキャンダルを期待していて、読者を獲得できるという考えだろう。


 出版社も 儲けなくてはならないのだから、その通りだ。

(いや、いくら、世の中に受け入れてもらえなくても、彼女のプライドにかけて

俺の義務で本の中だけでも 音色ちゃんには 
ずっと、ず~~っと、生き生きとしてもらわなくては)


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. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにある」 4

               三

 ある日、音色の出版作の多い、祥文館という 出版社を訪ねると、
音色の作品出版に携わったという、中年男性から 声をかけられた。

ネクタイの小日向 2



「まだまだ 若かったのに、非常に惜しいことをしましたね」
 編集長の佐久間という、その男性は きちんとした身なり、温厚そうな 人柄がうかがえた。
音色の通夜で 見かけたことがあった。

「で、彼女の恋人だった君が 文学の『ぶ』の字も興味がないのに、
彼女の代わりに小説を書いたんだって?」
「恋人じゃないです。ただの友人ですが」

15年 雑誌 壁に向き、横顔 はるま

居酒屋 注文きく女の子


 そう。俺はただの友人だった。彼女のバイト先の居酒屋に 会社の同僚と立ち寄ってただけ。
 しかし、いつしか 彼女に好意以上のものを 持ち――、
 いつか 気持ちを打ち明け―――、
 交際して、ご両親に 結婚を許してもらい、俺と歩むはずだった、音色の人生。
 結婚式は 彼女の夢とおり、南の島の砂浜で二人だけで誓いを立てて挙げよう。


はるま 進撃 後姿 白いTsyatu


 新居は 下町のボロアパートしか用意できないけれど。
 俺が 精一杯、働くから。俺は 小さな会社の営業マンだが、バイトを掛け持ちしたっていい。
 ささやかでいいから、音色と 温かい家庭を築きたかった。

少し怪し気な 妄想の上になりたった 未来像だが。 

☆そこへ、突然の彼女の訃報。
 書けるだけ書いて、音色のレクイエムにする。
 それが 俺のレクイエム。

 ここまで、若者の戯言と聞いていたかもしれないが、佐久間氏は 黙って聞いていてくれた。
 「君が音色ちゃんを 真面目に思っていたことは 信じるよ。
なんとしてでも、小説をちゃんと 世の中に出さなきゃな」

 ポン、と、俺の肩を叩き、
 「それには 彼女のここ最近の過去を もっと調べる必要があるな」
 佐久間氏は 一応、俺の原稿に目を通してくれた。


杏奈 巻き毛 笑顔



「動機が動機なだけに、男にしては、乙女チックなものになってるね」
 ズケズケと 言ってくれたが、何も言い返せない。むかついたりもしない。
(仕方ないよな……。にわかに 代筆なんだから。
それより この人の言う通り、彼女のことを、もっと調べなきゃ、
ちゃんと したものが 書けないのも無理はない)

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. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにある 5 」

                  四

 佐久間氏が しかめ面で、、
「どうしても ラストを彼女の死で終わらせたくないのか」
「彼女の死は 意味のある死であるはずですから」
 事実を 曲げるのではなく、ボクなりに 彼女の存在した証を 訴えてみたいのです」

15年 雑誌より 横目 春馬くん

ネクタイの小日向

「ふむ……」



「佐久間氏は、アゴに手を当て、考えてから
「俺も音色ちゃんを 死に追いやった「もの」 を、許せんよ。何かのカタチで制裁を
加えてやりたかった。 物好きが 音色ちゃんを 片思いしてくれていて、良かった。
納得いくまで書き直してみたまえ」

 どうせ、俺は物好きですよ。

「ただし、音葉音色(おとはねいろ)の文章からは 幼い頃から続けてきた 
フルートの音色が 感じられる。

漂っているという読者の感想が多い。
それを受けつけるものが 書ければ、の 話だ」


「フルートの音色が漂ってる文章……!?」

フルートのキーリング


(そんな、つかみどころのない、しかも、音楽には まったく 
縁のない俺に書けるだろうか――――!?)
 しまった、と思ったが、ここで退いては、男がすたる。

「出版するかどうかは、その後だ。電子出版ね」
「あ、ありがとうございます」正直に感謝した。

so-da 15年 九月号


勢いよく頭を下げたので デコをテーブルにぶちつけたほどだ。

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. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにある 6」

                  五

 まだ 21歳だった彼女の過去。
 俺たちが 知り合ったのは ほんの1年前のことだったから、それ以前の彼女を。
 幼稚園から エレベーター式の進学校。

杏奈 口開く


 勉強のかたわら、文学少女だった彼女は 中二の頃から、ポエムや 小説を書きはじめる。
 散文や童話のようなものなら、小学三年くらいから 書き始めていたらしい。


「音色ちゃんには 素敵な童話とか、よく読ませてもらったわ」
「ちょっぴり、可愛いイラストが 添えられているの」
「泣いちゃう話も あったっけ」
「私たち、勉強、勉強、と言われて、音色ちゃんのポエムやイラストで、ホッとしていたわ」
「音色ちゃんのフルートの演奏会に 行ったこともあるわ。
お母様、お手製のサテンのピンク色のドレスで まっすぐな黒髪を揺らせて素敵だった……」

教室で フルート吹く女子高生



15年 横顔 見上げる 春馬


 教育熱心な 両親の手前、勉強も 塾通いしつつ、フルートも続けつつ、
好きな小説を書くことも やめられなかったようだ。
 というより、小説を書く時間が 唯一、安らぎの場所だったんじゃないだろうか、と ふと思う。



 一括して、ラノベっぽい軽いものばかりだが、ひとつ芯が通っていて、心に残るものがある。
 (しかし、フルートの音色が漂う文章とは いったい?)

 彼女が高校進学して、まもなく、大手企業の取締役だった経営不振で リストラされ、
彼女も 退学して、公立高校へ転校する。



 その間も ずっと友人だった女の子たちは、
「音色、ぜんぜん、落ち込んでなかったわよぅ。返って、サバサバしてた」
「敷かれたレールの上を歩かなくてよくなった、ってね」
 声を揃えて言う。

 大学進学を諦めた分、好きな小説を書ける時間が 増えた、と、喜んでいたらしい。
 この頃の作品からラノベの匂いが消える。一段階、大人な小説だ。


黒髪の肩に手をやる


☆かたわら、苦しい家計を助けるために いろんなバイトをやっていたようだ。
 その頃、助手のバイトをしたヘアメイクの店で 彼女の運命を、大きく変える出来事が
 待っていた。
 
 狂わせる荒瀬礼司という男と知り合うことになったらしい。
 彼女の全財産を巻き上げて、自死に至らしめた男だ。


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. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにある 7」

陽射しが 射す 美容室

                      六

 音色ちゃんの小説を書きあげる前に 彼に会ってみることにした。
 恋人から 全財産を巻き上げた証拠など どこにもなく、
 音色が 訴え出ていたはずもなく、荒瀬は無傷のまま、のうのうと、
へアメイクアーティスト世の中を生きている。
 これが、赦しがたい事だ。

15年 シネマより 進撃 ブラックTシャツ はるま 笑顔



『 passion rose 』
ヘアメイクの 店の名前だ。
高級住宅街の真ん中に琥珀色のガラス、ネイルサロンも あり、30席ほどある大型高級店だ。
 有閑マダムが 集っているのだろう。
 
 螺旋状の階段を昇り、大きなガラスの玄関の前に立つ。
 自動ドアも 音もなく開いた。
 真っ白な インテリアが 視界に広がる。

「いらっしゃいませ」
クリーム色のバラが豊かに 豊かに飾られてる受付カウンターの女の子が迎えた。


かぼちゃのバラのブリザード




「予約しておいた遠野です」
「初めての お客様でございます。どうぞ、こちらへ」
 導かれるまま 真ん中辺の席へ 案内される。

美容室 シャンプー中


「今日は いかがなさいますか?」若い女の子が尋ねに来た。
「荒瀬さんというアーティストさんは いらっしゃいますか?」
「はい。少しお待ちいただかなければ、なりませんが」

☆へメイクアーティストを絵に描いたような、優男。
 クロスのペンダント。
 ソフトブラウンの長髪。
 これが、女グセが悪く、ひとりの女の子の財産を 巻き上げた非道な男。


井浦 新 派手な ファッション 
(井浦さん、すみません・滝汗)

俺は 待合の椅子に戻され、ヤケに 金ぴかの まばゆいシャンデリアや出来上がりほやほやの髪をセットして、
出口へ向かう、マダムを見物していた。
 1時間すぎ、2時間すぎ、荒瀬は 歩き廻って、客に接していて、なかなかの売れっこらしい。


クリーム、黄色のバラ、みどりの実


 待ってる間に、ヤツの後ろ姿や接客のネコなで声を聞いているうちに、
自分の髪を触れられることが、イヤになってきた。
 客のふりまでして、毛嫌いを感じる必要はないだろう。

(どこか 別の場所に呼び出すことになるか)
「荒瀬さま お勧めが 終わり次第、2階のカフェで待っています」

 このメモを 店の子に渡し、別の女の子に髪の毛をカットしてもらうことにした。
 もちろん、荒瀬のことを聞きだすためだ。


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. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにいる 8」

「荒瀬さんて人、かなり人気らしいね」

14年 はるま 2つ


「ハイ。先生は腕も センスもバツグンですから、おかげさまで 予約がたくさん、入ってますよ」
 若い女の子の美容師は 屈託なく答える。

「きっと 私生活でも モテるんでしょうねえ」
「さ、それは まあ、私とも 店の女の子もキャアキャア言ってますけどね。甘いルックスですから」
美容師は おっとという風に口元を押さえ、
「お客様、鏡の前では、ご自分が一番、カッコいいとお思いになって」


 女の子は 話をはぐらかそうとしたが、
「予想通りだね。ところで 音葉さんて女の子、
僕、友人なんですが、あなたは知ってますか」

「ああ、彼女なら知ってますよ。しばらくここにいて、急に 辞めちゃいましたけど、
とっても 明るい頑張り屋さんでした」
「荒瀬さんの取り巻きだったのかな?」
「取り巻きも何も、…… あら、私ったら つい」
 女の子は ペロリと 舌を出して口を閉ざしてしまった。


杏奈 木陰で



 しかし、その口ぶりからして 荒瀬さんと音色が かなり 接近していたらしい。
人間のできていない俺は ついシットの焔を燃やしてしまった。


 メモを残して カフェへ移動した。
そうめんや
(これは、ゴアイキョの 素麵屋さんの 間違い・笑)


 よほど、律儀な 男でないと来たりはしないだろう。
 果たして、「音色」の名前に効力があるかどうかだ。
返って、来ない要素になってしまうかもしれない。


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. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにある 9」

                       七

紫の街


 街が黄昏のヴァイオレットに 染まり、窓の外に ネオンが 灯りはじめ、何杯めのコーヒーを注文しただろう。
 店の黒光りした扉が開いて 荒瀬が現れた。
 俺の方が 面食らったくらいだ。

井浦 新 黒じゃけ 



 呼び出された相手が判らず、店内を見回している。
 俺の方から 軽く手を上げた。
「確か、お客様でしたね。荒瀬礼司ですが」
 近づいてきた荒瀬は ぶっきらぼうに言った。薄いブラウンのサングラスに、真っ白のシャツ、ジーンズ。
「名乗りもせず、失礼しました。遠野翔馬と申します」
 「学生さん?音色ちゃんの友達?」
 サングラスを外し、荒瀬は向かい側の席に座り、ブラックを注文した。
「客のふりして、俺に会いに来たの?死んじゃった音色のために?」


 死んじゃった音色……、死んじゃった音色……

杏奈 落ち着いた微笑み



 こいつに、そんな言い方、されたくない!!
 腹の底で煮えたぎった思いが 手元の上のグラスを強く強く握らせた。

(この男……)
 かなりなワルだ。こんな男から 本当のことを聞きだすのは 難しい。
 何もかも、なし崩しにされかねない。
 無理やり、頭を大回転させて 冷静さをかき集めた。座り直して向かい合う。

「昨秋、音色がいつもロングだった髪を肩まで 切りました。
 あなたの勧めだと言っていた。その頃、

 彼女は 初めて 『passion rose』へ行ったんですね?そして バイト助手として働き始める」

 荒瀬は シニカルに大きめの唇の端を歪めて、
「な、なんだか、警察の事情聴取みたいだな。そうだよ、えっと……」
「遠野です」

杏奈 ボブ



「可愛くなっただろ、肩までの髪。ぐんと印象が明るく、活動的になった」
「と、同時にあなたと交際を 始めたんですね。しかし、貴方には多数の恋人が……」
 改めて、ジロリと 俺の顔を睨んでから、
「音色は、ああ見えて、独占欲が強くてな。自分とだけ、つきあってくれ、と言ってなきつかれた」
「当然じゃないですか」
「お、君も 好青年路線を変えないねえ」
「奥さんと子どもがいることを 隠して交際したりしませんよ」
 荒瀬の眼が ぐっと睨みを聞かせた。


トワイライト イルミ



モカベージュはるま


「遠野くんとやら。俺を警察に差し出したいのかな?
客や店の女の子を泣かせたり、借金したり駆け落ちしようとしたり、の罪で?」



「そうだ、昨秋だったか、手に包帯巻いていたことがあった。
包帯を取れるようになっても、そこには、煙草の火を押し付けた痕がいくつもあった。
音色は隠そうとしていたっけ。あれは、もしかして」

杏奈 泣きそう?



「何が言いたい」
 負けじと 睨み返す荒瀬の眼光。
 まるで 爬虫類だ。灰皿に吸い殻を押し付ける手の甲に、おぞましいウロコを見たような気がした。



「……」
「何か証拠でも?」
開き直って、金ぴかのライターを鳴らして、煙草をふかしはじめた荒瀬を、どうしたものか?
「証拠なんて、どこにも。俺は ただ、彼女の無念を代って書き残したいだけだ」
「ほほう、彼女に感化されて、あること、無いこと、女々しい小説に書くつもりか?」


眼帯はるま

思わず、こちらも 睨みつけた。


「事実だけを書くつもりです。
それにしても、苦労してバイトしている彼女から大金を借金したりしたというのは 本当なんですか」
「直球で訊いてきたね。じいさんの遺産分けがあったらしいんでな」
と、口をすべらせてから、荒瀬は 慌てて 視線をそらせて、咳ばらいをした。

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. 三浦春馬 イメージ小説 「宇宙の果ては ここにある 10」

                     八

 次の日、俺は 音色の実家へ向かう列車の中にいた。
 関東圏にあるが、長閑な果樹園や田畑が広がる時間のゆったり流れる町だ。

さいきん ELLE

ブドウの棚




 町はずれの小さな家が 東京で事業に 失敗してから、音色一家がやっと落ち着いた場所だ。

 告別式は 公民館で行われたので、家を訪れるのは、
 「本を書きたい」と許しを申し出た時以来、2回目だ。

賀来千賀子 ベージュスーツ



 母親はまだ四十代半ば、音色と目鼻立ちが似て、品の良い女性だが、表情が かなり疲れている。
 無理もない。ひとり娘の 音色ちゃんを亡くしたばかりだからな。

 
(また、来たのか)という、顔をしながらも、小さな座敷へ通してくれた。
 こじんまりした、清潔な佇まい。
 音色ちゃんの遺影にお線香をあげる。
 遺影の前には 彼女の作品が 十数冊。
 彼女が描いた、動物や 花のカラフルなイラスト。
 友達が送ってきた、ぬいぐるみや 手紙。


 そして、何よりも愛用のフルートが光り輝いて持ち主の側にある。


フルートの手元


 庭の木に止まった ニイニイゼミが かまびすしい。額に汗が 滲む。

「失礼ですが……、昨年、音色ちゃんのお祖父さまが 亡くなられたというのは、本当ですか?」
「どこから、そんなことを?」
運んできた冷茶のグラスを倒しそうになって 母親は怪訝な顔をする。
(やっぱり、アイツの言ったことは 本当だったのか。
お祖父さんの遺産分けを聞きつけ、彼女に金をせびり―――、巻き上げたわけだ)


「あのう」渡り廊下を足早にやってきたのは、セーラー服を着た少女。
 それも、音色の面差しによく似ている。
「妹の調(しらべ)です。姉は……いやいやではなく、好きな人の役に立てると言って、喜んでいました。
でも、多分、騙されているということは、分かっていたと思います」
 妹の表情は 姉の考えを理解したいという必死の思いが 溢れていた。

 後ろに隠し持ってきた、姉のフルートを 半ば 有無を言わせぬ感じで俺に渡した。
 音色の形見、愛用していたフルートだ。

杏奈 セーラー服 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

立ち去ろうとした時、廊下で親父さんに出くわした。
黒くて太い眉がつり上がっている。


「君は 私どもの内輪のことを、根掘り葉掘り、聞いて小説に 書くつもりかね」
「許してください。これは 僕が 音色へ頭を下げる気持ちもあるんです。
彼女の苦しみを察してあげられなかったことの」
「それは……、わしどもも、同じだよ」
 握られた親父さんの拳は ぶるぶる震え、苦渋の表情だ。


じぇ 僕の11



肩を寄せ合って、廊下に立ったまま、泣いている音色の両親を 後にして、
俺は 緑の濃い庭を、露を蹴散らして後にした。


庭つき 古い 住宅 1


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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
 共に全国出版、ネット販売しております。

★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
 全国ネット販売しております。
 

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