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浪漫@kaido kanata

. 青リンゴ 姥捨て山伝説 その1

第 一 章

 音もなく 降り続く雪……
 今年は なんという 冷え込みだろう。

某ブログより サムハイ8

民家の雪景色


 藁の雪ぐつを 履いて進める足が こんなに 重いのは 初めてじゃ。
 行きたくねえ、行きたくねえ……

 大好きな ばあちゃんを 山に捨てになんぞ。

 時は 明治時代。
 ある山に囲まれた地方の貧村。
 この村では 年寄は 山の中へ捨てに行かなければならない。
 すでに ご一新を 過ぎているのに、まだ 江戸時代の風習が 固く残っているのだった。

ならやま 2

 
「馬作、ワシを負ぶって さぞ 重いじゃろう。ワシは歩けるぞ」
「バカ、言うでねえ、ばあちゃん!!
 姥捨山へ 自分で 歩いていく年寄がいるか!!

 負ぶって連れていくのが オラの役目。
 父ちゃんが 死んじまったから マゴのオラの役目じゃ」

 そこまで言って 馬作は 口をつぐんだ。
<なんで こんな 慣わしの村に 生まれちまっただろう>


 ばあちゃんは 着の身着のままだが、腐りかけの林檎を 大切に胸に抱いている。

かじりかけの青リンゴ


「なんだ、そのリンゴ」
「お前がくれたじゃないか、馬作。食べるのがもったいないから ずっと 持っているだよ」
 そういえば、その林檎は 前に 馬作が 山深く 迷い込んだ時、拾ったみっつの林檎のうちのひとつだった。

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. 青リンゴ 姥捨て山伝説 その2

 第 二 章

 やがて 長い冬が やっと 終わろうとしていた。
 もちろん、馬作は村の衆の目を盗んで 冬中、ばあちゃんに 食糧を 運び続け、ばあちゃんは 元気でいる。

サムハイ コタrう
桜と菜の花


 やがて 小川の氷も溶け、幾度かの嵐も 過ぎ去り 花々も咲き始めた頃、村を治める領主の ひとり娘、
姫りんご姫が 病で伏せっているという噂が 流れてきた。
 八方から たくさんの 薬師が 呼ばれたが 容態は 一向によくならない。
幼い姫は 高熱で 苦しみ続けているということだ。

 村の者たちは ウワサした。
「オラのじいちゃん、ばあちゃんたちを山に捨てろという 慣わしは ご一新前からの 古い風習だ。
 もう 新しい ご時世だというのに」
「きっと、天罰が下ったに 違いねえ」
それを 聞いた馬作は 村の衆に
「じゃが、ちっこい姫さまは 何も悪くねえ。可哀想でねえだか」
と、言うと、
「おめえ、領主が憎くねえだか」
「そりゃ、憎いけど…… 慣わしが 憎いんだよ」


 ある日、山へ向かう 道を登っていると、松の木の根元から 何やら 種類の違う若木が 
にょっきり伸びているではないか。
「あ、もしかして、あのリンゴの??」
 ばあちゃんが 持ってたリンゴを捨てた場所だ。
 そこから 種が 根を張り、若木が伸びたんだろうか!?近寄ってみると、確かに林檎の樹の葉っぱだ。
 その林檎の樹は 急速に成長して 馬作の背を、たちまち越え、
 翌年には 白い花をたくさん 咲かせた。

リンゴの花 1


「もしかして!!」
 馬作は 何者かに 突き動かされるように、花に受粉の作業をした。
 綿で作った 丸いものに 棒をつけ、その先に 花粉をつけ、雄蕊に くっつけてやる。
 林檎の樹の世話なんぞ したことがないが、山を越え、
林檎作りしている 農家にまで行って、教えてもらってきた。


<どうか、秋には たくさんの実が成りますように>

草笛 真正面 


 事の一部始終は 山にいる ばあちゃんにも 報告していた。
「なんで また お前、そこまで……」
「リンゴの実が 成ったら ばあちゃんに 食わしてやるからな。そしたら 精力つけてもっと長生きしてくれろ!!」

 ばあちゃんは 逞しく、裏山で 畑を耕し、姥捨て山に 捨てられた老人たちと 作物を作っていた。
 まだまだ 働ける年寄を 捨てろなんて 領主が ザンコクなのだ。

ブ 豪農の 館 1


橋本 環奈 浴衣姿


「しかし、その お前の言う通り、姫さまには 何の罪もないのじゃから気の毒じゃのう。
まだ 病で 苦しんでおられるのか?」
「まだ そうみてえだ」



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. 青リンゴ 姥捨て山伝説 その3

  第 三 章

 秋が来た。
 やっと涼しい風が吹く頃、馬作が 育てている林檎の樹に 実が成った。
 黄緑色の 美しい林檎だ。
 ばあちゃんに かつて 持たせた ちょっと 珍しい 青い林檎だ。

カゴに入った 青リンゴ


 一本の樹に かなり 実がなり、喜びいさんだ 馬作は 真っ先に ばあちゃんのところへ 持って行った。
 ふたりで そろって 丸かじりする。ばあちゃんは まだ 歯も丈夫だ。
「うんうん、こんなに 瑞々しくて うまい林檎は 初めてだ」


 そんな時、遠くの港町に アメリカという国とやらからの一行が 到着したらしい。
 こちらの村に向かっているとか。
 なんでも、村の領主の病の床にいる娘の見舞いに来ることになったとやら。

 山のばあちゃんは 
「姫さまが 誰よりも苦しんでいる。このリンゴをお見舞いに献上しなさい」と、
馬作に命じた。

草笛 真正面 


 しぶしぶ 城へ行くため、馬作は 庄屋の息子から 一張羅を借りた。
金ぴかの 羽織袴で、気後れするにも ホドが あるが、
いつもの 野良着よりは マシだろう。

ブ 髪の毛 いじられてる 心九郎さん
(そこまで いじくりまわさくても よかんべ) と 思いながら
悪い気がしなくなってきた。



 しかし、鄙には 稀な 美貌に このセンスの無いいでたちは 誰の目から見ても
 悲壮感さえ 感じられるのだが、本人は とにかく 領主に失礼に当たらないよう、
気後れから、だんだん思い直し、正装した気分でいる。
てか、すっかり なるしすと気分。

心2 胸に手を!!



 領主の家は 大きな屋敷だが、ご一新前は 小さな大名だったとはいえ、姫様には 会えずとも、屋敷内へ入れてもらえ、奥女中に持参した 林檎を 渡すことが出来た。

 時も時、アメリカ一行が 領主の屋敷に到着し、その現場を目撃。
 黒いカッチリした 制服、眩しい金魚の髪の毛、目は 空のような青、お酒で酔ったような 
真っ赤な顔。見上げる高い鼻、鷲鼻。

西洋軍人


 そんな男たちが 三十人ほどやってきたので、屋敷の奉公人たちまで 固まってしまった。

「姫様が ご病気と 伺い、お見舞いにやってまいりました」
~~~と、アメリカ人一行の言葉を お付きの日本語係が言う。

 急いで 領主が 大広間へ やってきて 平伏した。

ブ 豪農の館 庭先 みどり


 馬作が 襖の隙間から のぞき見していると、アメリカ人の大将らしき 男が 馬作の持ってきた林檎に 気がついた。
「これは!!私が 子どもの時、グランマが パイ、焼いてくれた、高熱が下がった時の林檎だ!!」
 ~~~と、叫んだらしい。

「なんですとっ!! では 我が姫の病も この林檎で治るやもっ!!」
 領主が 鼻息荒く叫んだ。

橋本環奈

「すぐに 船から調理人を呼びましょう。姫様に お元気になってもらわなければ」と、大将。
 たちまち 慌ただしくなり、屋敷の台所に アメリカの調理人が呼ばれ、林檎も運び込まれた。

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. 青リンゴ 姥捨て山伝説 その4

     第 四 章

 小耳にはさんだ アメリカ大使が、
「何ですと??この村では そんなヤバンなことをさせているのですか?」
領主は 真っ青になった。
 ここで アメリカ人に嫌われては 村の繁栄はパーになる。しかし、貧村が 生き延びるために 戦国時代から続いてきた慣わしなのである。

「いや、何かの間違いです!!」この若造は きっと酔っぱらっているのでしょう」

「誰が 酔っぱらって!!酒なんぞ 買う余裕もねえのにっ」

領主は 慌てて 馬作を 連れて行かせた。

ブ 豪農の 館 3 大広間


 アメリカ人一行を奥座敷に 閉じ込めてから 領主は 再び縛られた 馬作のところへやってきた。
「よけいな口を 聞くでない。本当ならムチ打ちの刑だぞ」

「いえ、申し直しましょう」両手を 後ろで 動かしながら 地面に座りなおした。「お願いいたしましだ。領主さま。年寄を山に捨てる慣わし、取りやめていただきたいです。村の衆も 皆、切にそう思っているはず」

「じゃから この貧しい村を 裕福にしようと アメリカ様 ご一行に来ていただいたのじゃ」
「えっ!?では…」
「おぬしの持参した林檎が 姫の病に効いて、もし治るのなら 年寄山捨ての慣わしは 廃止しよう」
 でっぷりとした領主は ヒゲをいじり、ふんぞりかえって言った。
「ほ、本当でございますかっ!!」
<これで ばあちゃんも 村に帰ってこれる!!>
 馬作の顔が 耀き、根性座った ぶいさいんが 出た!!

スタレポより 黄色い着物

「ととさま……」
 その時、障子の隙間から 小さな白い顔が 覗いた。

「おおっ、姫ではないか!!おとなしゅう 寝ていなければ いかん!!」

「でも その若者は わらわのために 青い林檎を 持ってきてくれたのでしょう。異人さんのお話では
焼きリンゴの お菓子を いただけば 病に効くらしいではないですか。
乳母から聞きました。どうぞ、その縄をほどいて 自由にしてやって下さい」

グラニースミスパイ

 コホン、コホンと 咳をして、顔が青ざめている。
「わ、わかった、わかったから 無理せんでくれ。姫」

 市松人形のような 漆黒の髪、熱のせいだろうか、潤んだ瞳。ぱっちりとした濃いまつ毛。紅い頬。
 人間と思えないような 美しい女の子だ。
 村で 走り回る ガキ共に混じっている 女の子とは 全然違う!!そして 縄は解かれた。


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. 青リンゴ 姥捨て山伝説 その5

「ととさま……」
 その時、障子の隙間から 小さな白い顔が 覗いた。

少女の天女 人形


「おおっ、姫ではないか!!おとなしゅう 寝ていなければ いかん!!」

「でも その若者は わらわのために 青い林檎を 持ってきてくれたのでしょう。乳母から聞きました。どうぞ、その縄をほどいて 自由にしてやって下さい」
 コホン、コホンと 咳をして、顔が青ざめている。
「わ、わかった、わかったから 無理せんでくれ。姫」
 市松人形のような 漆黒の髪、熱のせいだろうか、潤んだ瞳。ぱっちりとした濃いまつ毛。紅い頬。
 人間と思えないような 美しい女の子だ。
 村で 走り回る ガキ共に混じっている 女の子とは 全然違う!!そして 縄は解かれた。

ウインク 小太郎


「姫さま、ありがとうごぜえます。あのリンゴが 姫さまのお身体に効きますよう、
お祈りしとりますだ。直々のおでまし、ありがとうごぜいましただ」
 姫は コクンと 頷いて、馬作に にっこりし、奥へ消えていった。

 アメリカ人一行が とんでもないことを言いだした。
 彼らの求める 鉱物の地下脈に、馬作が詳しいのではないかと いうのだ。

 尋ねられてみると、馬作の家には 山の鉱脈についての古地図みたいなものが
 納戸に大切に仕舞いこまれている。

 ひいじいちゃんの、そのまた ひいじいちゃんくらいから 伝わるものらしい。
 なにせ 古くて 褐色に変色してしまい、虫食いもひどく、少しでも触ると ボロボロになって
 風に吹き飛ばされてしまいそうだ。

古地図 沿岸


「こりゃあ。いくら 読めと言われても オラには 無理な話だ。第一、字が読めん。
………しかし、もしかしたら、ばあちゃんが読めるかも!!」

 領主の使いは 目を瞠った。
「お前のばあちゃんは?」
「姥捨て山ですよ!!ご領主の言う通り」
 それは ただちに領主に 告げられた。


「なんだと、あの林檎を持参した 若造の祖母が 鉱脈の古地図を読めるだとう~~~~~~~~~~~~!?
すっすぐに 山から 連れ戻し、若造と共にこれへ 呼べ!!」

 使いの馬が 村へすっ飛んでいった!!
 馬作も 慌てて 山に向かった。

 たちまち 山のばあちゃんのところへ 領主の馬に乗った 馬作が。
「え、何だって、わたしゃ、掟に従って ここに捨てられたんだよっ!!」

 眉を 吊り上げるばあちゃん。

デンデラ 草笛光子


「オラも 何がなんだか わからんのだけんど、とにかく、ばあちゃんが あの古い地図を読んでくれたら 
家に帰れるかもしれん!! また 村で暮らせるかもしれんのだぞ」

「ホント ケ !! 馬作ゥ~~~~!!」

 ばあちゃんの顔が輝き、ふたり 両腕を 組んで ピョンピョン飛び上がった!!

 しかし……モンダイは 古地図だ。
 納戸の奥から 引っ張り出したものの、古ぼけすぎている。一点の光は ばあちゃんが 
士族の出だから 字が読めること。よその家から 嫁に来たのではなく、ひとり娘だったことだ。

 ひいじいちゃんは ばあちゃんが まだ幼い頃、古地図を広げて 長々と 説明したことがあるらしい。


 ばあちゃんは 古い記憶をたどりたどり、
「この鉱物、どんな 力が あるのか知らんが どうやら 裏山に 大きな脈があるらしいぞ」
 すでに アメリカ人一行も やってきて ばあちゃんを取り巻いて固唾を飲んで見守っている。

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. 青リンゴ 姥捨て山伝説 その6

とりあえず、ばあちゃんは 領主の屋敷まで 呼ばれた。
 いったん、山に捨てられた 年寄が 村に帰ることさえ 異例なのに 村の者が 領主の屋敷に 呼ばれるのは 異例中の異例だ。

黒い着物 1


 領主の屋敷の庭先に ばあちゃんは 筵の上に 座って古地図を 見つめた。

ばあちゃんの 真剣な顔……。
 そして 額には じっとりと 脂汗が 浮かんできた。
 古地図を 見つめる目付きは 何かに憑りつかれているようでさえある。

「あっ!!」
 ばあちゃんが 頓狂な声を上げた。
「ここ一番の鉱床のある場所は 姥捨て山の神社の ある場所とおんなじだ!!」
「ええっ!?」
 一同、目を 丸くした。
「では、神社の神域を掘らなければ ならんっちゅうことに!?」
 役人が叫ぶ。
「しかし、そんなことをしたら、神罰が 下るのでは!?」

 その姥捨て山 本殿には 古井戸がある。言い伝えでは 寂しさ、恐怖感、寒さ、飢餓に耐えられなくなった 年寄が 身を投げる井戸らしい。

ツタの古井戸


「逆だよ。」馬作が 叫んだ。
「神社があるから、姥捨てなんて慣わしがあるから、罰が下って ご領主さまの姫が 病になったんじゃ!!」

<あんな 神社、無い方がいい!!>
<風習も 無くなってしまえばいい!!>

心 黄色きもの すこし 哀しい顔


 「そうすれば 姫様も元気になって 鉱物も掘れて、この村も 栄えるんじゃ!!」
 仁王立ちに 叫ぶ馬作を 村の者も 領主の手下も そして ばあちゃんも 目を丸くして 聞いていた。

「待ってください」
 鈴のような、しかし、しっかりとした 声が 皆の背後から響いた。
 領主の姫、姫りんご姫である。


 長い間、熱で伏せっていたはずが しっかり立って 目の力もしっかりしている。
「姫、起き上がって よいのか?」
 父の領主が 心配そうに 姫の身体を支えようとした。
 おかげさまで、あの林檎の焼き菓子のおかげで 
気分が すっきりしました、父上」
 姫は 馬作に 駆け寄った。


「ありがとう。心から お礼を申しますぞ。わらわは もう少しで 母上のおられる 黄泉の国へ 行ってしまうところじゃった。じゃが、ほら、そなたの林檎のおかげで このように 元気になりました」

 姫の 漆黒の髪からか、衣からか、ほのかに 甘ったるい花の匂いが漂う。
「ようございました、姫様。こんなに ほっぺたが 赤くなられて」
「今度は わらわが お返しする番です」
「えっ!?」
「その姥捨ての神社の古井戸とやらへ、わらわをあないしなさい」

橋本環奈1



 一同、ギョッとした。
「姫様、いったい 何をなさる おつもりで……」
 馬作が 恐る恐る尋ねると、
「わらわが 古井戸の中へ降りて行き、その鉱脈の元には 何があるのか 見届ける」
「ええっ!?」
 とても 鬢(びん)そぎを 終えたばかりの十二、三歳の少女の言葉とは 思えない。
「姥捨ての慣わしを続けてきたのは わらわの血筋の家じゃ。そのために 村の者がどれだけ悲しんできたか……。この 救ってもらった命、無駄にしてはならぬ。夢の中で母上がそう申したのじゃ。わらわは 井戸へ入ってみる」
「それなら、オラが 姫様を 負ぶって井戸の中へ入りましょう」
 馬作が 進み出た。
「おお、優しいだけでなく、勇気のある若者じゃ。名はなんと申す?」
「馬作……と 申しますじゃ」

映画 ならやま 1




「あい、わかった、馬作とやら。わらわを背負って井戸の中へ 降りてたもれ。きっと何かナゾが 隠されているはず」
「わかりました。姫様の命、お預かりいたします」
 平伏して答えたものの、早くも額に 脂汗がにじんできた。
「そして 当日、姫はカゴで山へ登ることになり、領主とアメリカ人一行数人も 駕籠を取り巻くようにして、その後ろに 馬作がつき従う。
緑美しい祠


 姥捨て山に 到着して 神社の井戸を領主、自ら 覗いてみる。
底知れぬ暗渠だ。どれほど深いのか 見当もつかない。
 ここに、山に捨てられた 老人が 孤独と餓えと寒さに 耐えられず 身を投げたのだろうか?
 ひんやりした空気に そんな考えが 頭をよぎると ぞっとしたが、
馬作は 姫を背負って、縄で強く しばりつけてもらった。

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. 青リンゴ 姥捨て山伝説  その7

 思えば、少し前に 我がばあちゃんを 背負って 姥捨て山を 登ったこと、こうして姫を背負うこと、どっちも その命をあずかって、なのだが、因果応報を感じる。


心九郎さま ドアップ


かごに 負ぶった 姥捨て山


 ばあちゃんを 捨てなければならなかったのは 姫の領主の命令。
 姫を背負うのは 井戸のナゾを暴いて ばあちゃんを 本当に家に戻すため。

 馬作は 領主の家来、数人に 釣瓶を下してもらい、積み石に囲まれた丸い井戸の中へ降りていった。

 その年、村は かつてない飢饉に 見舞われていた。
 昨秋の野分による 河川の氾濫で 田畑は ほとんど 水害を受け、
粟も稗(ひえ)も、麦も収穫できない有様だった。

モノクロ 明治の飢饉


 冬から 春にかけては 雨が降らず、畑の種まき、田植えの時期になっても 水不足でままならない。
 農民たちは いつもに増して飢えていた。
 領主も頭を抱えていた。
 いつ、農一揆がおこっても 不思議はないのだ。

 そんな時だった。ようやく 姫の身体が 回復したのは。

橋本環奈シックな服装


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 井戸を下っていく 馬作と姫を見守りながら、ばあちゃんが 領主の前に進み出て膝を折った。
 
「オラ、いえ、私はただの村の老女でございますが、ふと 思い当たる節がございまして」
「何じゃ?申してみよ」
「古井戸にある何かというのは 村に繁栄をもたらすものかもしれねえし、
また 災厄をもたらすものかもしれねえ、という気がするのですじゃ」

「なに?繁栄か 災厄とな?正反対のものではないか」
 領主は 老女を じろりと見て、唇をひん曲げた。

「きっと 賢しい姫様は お気づきなのでしょう。それをどうにかしなければ 
村の運命を 左右するものでございましょうから」

 メリケン一行も、老女の持つ雰囲気から 神妙な顔つきで取り巻いて見守っている。
「老女、そこへ なおれいっ!!」
 領主の怒号が 飛んだ。家来が 持っていた 刀を鞘から抜く。

時代劇 おじさん カッコよすぎ
(ちと、カッコよすぎ)

「ご無礼の段は 重々承知の上でございます。こんな年寄をお斬りになっても お刀を穢すだけ」
「うむむ……」

「姫さまは きっと ナゾの一端をつかんで お戻りになられるですじゃ。
マゴの馬作は 貧しい育ちでも 正義感 強う育ててございます。
命に代えましても 姫様を守り 地上へ帰り着くと 信じております」

時代物の正装した老女


 伏せられながらも、老女の目は爛々と輝いて マゴの青年を信じている。まるで 神社の巫女、いや、仙女のようだ。
 領主を 始めとして、一同、圧倒されて ひと言も返せないという 気迫が老女から あふれていた。


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. 青リンゴ 姥捨て山伝説  その8

 幾尺、下っただろう。
 見上げる井戸の上の光が 小さく見える。

サムハイ びっくり ちょんまげ


「姫様、大事ございませんか?」
「はい」
「苦しゅうないケ? あ、苦しゅうございませんか?」
「はい」姫は 馬作の背中でクスッと笑って 
「それより 先ほどから そなたのマゲが わらわの 鼻をくすぐって くしゃみが……くしゃみが……」
 クシュンッと、姫の小さな くさめが 井戸の中で 何重にも響いた。
 ふたりは 笑いあって、尚、井戸の下へ下へと 降りていった。

橋本環奈 Vサイン


そこへ突然、馬作は 足首を 冷たいもので 掴まれた。
「ひぇっ!!」

白い手 1本



 見下ろすと、井戸の底の暗闇から 青白い手がにょっきり出てきて 足首を握っている。
手は二本、三本と 増えてくる。
「きゃ~~~~っ!!」
数十本まで 増えた手は 姫の足首やスネまで掴みはじめた。

白い手 わんさか

 馬作の腰や背中まで 何本ものウデが まとわりつく。
 ついに ひとつの手が 肩にかかり、濡れた黒髪、白い額が 肩越しに 見えた時、


「ばあちゃん、助けてくれ~~~~!!」
 馬作の 叫びに 井戸を覗きこんだ ばあちゃんは

「これは……!!餓えと 寒さに耐えられず、身投げした 年寄の怨霊……」
 ばあちゃんの眼光が 異様な光を帯び、
「地獄へ去ぬ(いぬ)がよい。怨霊ども。お前たちは 気の毒と思うが、
太陽の下に生きている若者たちを 地獄へ引きずり込む 権利は お前たちには無い!!」



 ばあちゃんの一喝に、馬作の肩にかかっていた 白い手が 力を 緩めたと思うと、
次々と 他のウデも力を失くして 消えていった。

「ほう~~~~」
 馬作と姫は 心底、安堵した ため息をついた。
 姫の小さな胸から どきどきしているのを 背中に感じる。
「もう、あの手は いなくなったど。姫様。ばあちゃんが 追っ払ってくれたらしい」
 そして 再び 気を奮い立たせて そろりそろりと 下っていく。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「あれは?」
 姫の 声に下を見下ろすと ようやく 井戸の底に 見えた、
どろんと黒い水面に 鮮やかな 薄みどり色の 丸いものが ポコリと浮いている。


 上からの かすかな 光を受けて輝いている、それは――― 目を凝らすと林檎だ!!


 たちまち 漆黒の水面に 黄緑色の林檎が ポカリポカリと 浮いてきて、
水面が見えなくなったと思うと どんどん 増えて 高く積み上げられていく。

青リンゴ わんさか

ブログ用 サムハイ いかる小太郎



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. 青リンゴ 姥捨て山伝説 その9

「林檎だと??」
 領主の家来が 首をかしげて 鶴瓶を 上げようとした時、
井戸から 溢れてくる林檎がどんどん 飛び出してきた。
「なんだ、こりゃ 姫さまたちが 見えなくなったぞ」
「重くて釣瓶が ビクともせん!!」

ピカピカ 青リンゴ いっぱい


 領主が 駆けつけてきた。
「姫、姫りんご姫や、どこにおるのじゃ、この林檎の山は 何じゃ!!
生きているのか、皆の者、早う、姫を引きあげよっ!!」
 家来が 10人くらい 井戸の釣瓶に取りつき、ひっぱり上げようとする。


 その間にも 井戸から どんどん林檎が あふれてきて その辺りに 転がり始める。
 馬作と 姫の姿は 林檎に覆われて 完全に見えない。
「姫~~~!! 生きていてくれっ!!」
「馬作ぅ!!」
 ばあちゃんも 井戸へ向かって 叫んだ。


 家来どもが 真っ赤な顔をして 「せぇ~~の!!」で 釣瓶を 引上げ……
 やっと 青林檎の中から 馬作と姫のおでこが 見えた。
 「姫様、地上に上がれました。大丈夫か!?」
「は、はい」
 ふたりは 家来の手で 井戸の外へ 引き上げられ、地面に転がった。全身 濡れそぼっている。

心九郎さま うっとり ドアップ
橋本環奈 Vサイン


「ちち……父上さまっ!!」
「倒れていた姫が 侍女に助け起こされながら 領主に叫んだ

「この林檎たちは 神様からのお恵みです。一刻も早う、飢えている村の者たちに 分け与えてくださいませっ!!
これだけ あれば 飢えているものの命を救うことができまするっ!!」
「お~~~~~~!!」


 一同、そろって 姫りんご姫に目をやった。
 馬作もギョッとして傍らの姫を 改めて見つめる。
「そうじゃ!!そうじゃねえか!! この林檎で 腹、減りまくってる皆を満腹させることができるじゃねえだか!!」

木造やねつき 古井戸
リンゴの花 2


 思いがけず、ヤマで拾った林檎を 神社の井戸に投げ込んだことが 幸いして、村の窮地を救うことができる。
 たちまち 有り余るほどの林檎が 山から山へ 選ばれた。
 餓えに餓えていた 農民たちは この瑞々しい 林檎の山に 目を見開き、
老若男女は 飛びついて、まず、丸かじりした。


「何日ぶりの食べ物じゃろう」
「むむ、歯ごたえがあって 美味えのう」
「生き返る思いじゃ」
「五臓六腑に 沁み渡るとは このことじゃ!!」
 皆、生き生きとして 大人は子どもにも 与えてやっている。


 農民だけでなく 領主たちも 皆、飢えているところを、この林檎の山で 潤った。
 井戸からは まだまだ 林檎が 湧き続けて止まらない。

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. 青リンゴ 姥捨て山伝説 その10

「馬作……」
 ばあちゃんが 側に来て 涙ぐんだ。
 暖かな囲炉裏の焔で ばあちゃんの顔も 橙色に染まっている。
「たまたま、山で拾った 林檎が 井戸の中で こんなに増えてしまうなんて」
 村の者にも 林檎が 行き渡り、一段落したところで 馬作の村 あばら家の前に一台の輿が 到着した。

ブログ用 カゴ やや 豪華


 降り立ったのは 姫りんご姫である。

石橋杏奈 桜バック


 村の者も 煌びやかな輿に 気が付き、何事かと わさわさ集まってきた。
「なんてえ 天女みてえな 姫さまじゃ」
「あの クマみてえな ご領主の姫さまかね?」
「これ、お前さん、聞こえるよ、お付きの女中さまや 若い衆が 見張っている」
「それにしても ヨカおなごじゃのう」


「これは 姫様、こんなきたねえ ところへ」
 馬作とばあちゃんは 走り出て 地面に膝をついた。

「おふたりとも 顔をお上げください。今日は 改めてお礼を申し上げるつもりで参りました。
父も後日、参る所存でございます」
「ひぇっ!!」

「あ、あばら家ですが、とにかく お上がりくだせえまし」

あばらや


 姫は 馬作の小さな小屋のような あばら家の囲炉裏の前に座った。


いろり 1

「馬作、そなたのおかげで 村の者たちは 餓えから救われ わらわの命も 救ってくれました。
なんと お礼を 申してよいか わかりません」
「たまたま 起ったことを、もったいないお言葉です」
「いいえ、そなたは この村に 続いた 姥捨てという 良くない慣わしを断ち切ってくれました。
そのことも お礼申し上げなければなりません」


こころ

「そりゃ、オラもばあちゃんと ずっと一緒に暮らせることになって、こんなに嬉しいことはごぜえませんよ」
 馬作と ばあちゃんは にっこり笑って 向き合った。


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. プロフィール

海道 遠(かなた)

Author:海道 遠(かなた)
小さい頃からお絵描き大好き
お話創るの、大好き
      ↓ 自然に
漫画家になりたい
      ↓
OLを退職。デザイン学校の漫画科へ入学
      ↓
家庭の事情で後、半年というところで退学、OLに戻る
      ↓
技量不足とひどい肩こり症のため、もの書きに転向
      ↓
結婚、妊娠、育児のブランクを経て再度ペンを持つ。
      ↓
が、コンクールに落ちる事、数知れず。
      ↓
諦めてアマの道へ

★著作★
 ペンネーム:海道 遠(かいどう かなた)
 「“海王の接吻”を抱きしめて」新生出版
 「CROSS」新風舎 
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★海棠結実(かいどう ゆみ) ペンネームで 

 【 遠雷去らず 】風詠社(鎌倉時代もの)
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